Day6 アバター
──遠い未来、市民は全員アバターになった。
地球人が入植したとある星。地球と変わらない重力、だだっ広い荒野。生態系は何もなく、イチからの都市作りに最適だった。
たった一つ、大気のバランスが人を受け付けないという点を除いて。
限られた資源を最大限活かす方法を考えた入植者たちは、人々をカプセルの中に入れて一カ所に集めることを思いついた。そこからホログラムをまとった分身ロボット「アバター」を操作し、生活を営む事にしたのだ。
入植から長い時が経った。
セントラルタワーから出てきた青年型アバターは、一緒に生活している支援人工知能に「あばたもえくぼ、ですね」と茶化されていた。
「それどういう意味?」
青年が整った眉を歪めて人工知能に聞き返す。
「あばたもえくぼ、とは誰かに強い恋心を抱いている様子をさす言葉です」
「茶化してるの?」
「滅相もない。受付のお嬢さんに対してあなたがその状態だと判断したまでです」
なんとなく、もっと違う意味があるような気がした青年は釈然としない気持ちのまま歩き出す。
道行くアバターたちは誰も彼もホログラムで完璧な美貌を維持している。中には着ぐるみのような姿を選択する人もいたが、それでもどんな見た目も均整の取れた美しい姿をしていた。
もし、彼らの町を現代人が見たら生気のない3Dモデルが歩き回っているように思うだろう。
青年は、透明な保護ドームの向こうを眺めながらぽつりと呟いた。
「ねぇ、人工知能。『あばた』とか『えくぼ』って何?」
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