第544話 泥 🥅



 見えるように詠む。これが作句の基本であること、頭ではわかっていながら実行はなかなかなのですが(笑)さらに興味深い論考に出会いました。「藺の花をひつぱつてゐる蜘蛛の糸 高浜虚子」に見るように「写生は映像を映す技(虚子)」なのではありますが「空蝉のかんばせ左右ずれており 岸本尚毅」のような嘘も必要ですと。


 さらには「本当にそうだよねと、だれもが文句なく共感する句を詠むべし」と仰せなのですが、あのですね~、それが出来れば苦労しないわけでして(笑)多彩な論考に接すれば接するほど手も足も出なくなって来るのです。かといって無知がいいわけでないことはもちろんなので、こういうときは猫のように丸まってやり過ごします。


 ヨウコさんにとって写生の最高峰は「泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟」の一句。泥と雪の対照の妙、中七のけざやかさ、下五の意外性のある着地、いずれにも卓抜な才がきらめいていて、こういう句に憧れますが、現実の実力では、とうてい及びません。ただ、簡単に到達できないからこその至高の文芸だよね~とも。(*'▽')




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※ラジオをつけたら、弦哲也さん(作詞・作曲)ご本人の弾き語り。「♪ 丘の上の小さなホテル……オーナーの手づくりの風見鶏……」のフレーズがあって、夜明けの胸にじんと染み入りました。かつてペギー葉山さんが歌っていたそうですが、初めて拝聴したヨウコさん、こういう作品が一作でも書けたら本望だよね~と。(´ω`*)




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