第433話 仕舞い 📒



 かなり気が重いけど、せっかくその気になったんだから真剣にやってみようかな。そう思って具体的に考え始めると、漠然と想像していたことと現実は大きく乖離していることに気づきました。はい、いわゆる人生仕舞の話なんです。まだそんな年寄りじゃないと、つい言いたくなりますが、五十代で始めるのが理想と聞きますしねえ。


 とにかく、この世の空気を吸わなくなった瞬間にすべての事象が凍結されるのですから、重要書類でもなんでも次世代が困らないようきちんと整理しておかなきゃね。古いものから手をつけてみると、ああいうものって何年分もたちまち溜まりますし、さすがに昭和はありませんが、平成や令和や年度を確認するのが面倒なんですよね。


 ペーパーレスといいながら、じつはいまだに紙がしっかりとものを言う社会であることを思い知らされながら、シュレッダー代わりに指先でこまかく破いて破いて……ふたつのスケルトンケースがきれいになるころには、どっと疲れがやって来ました。これからは溜まらないうちに片づけようと思いましたが、すぐ数年が経ちそうです。




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