第407話 正論 🦗
「ちょっとヨウコさん聞いてくれます? うちの母って本当に可愛げがないんです」 久しぶりに会った後輩が勢いこんで言うのです。仕事の疲れ&不眠で体調をくずし、救急車で運ばれた病院のスタッフに身内の連絡先を訊かれたとき「むすめには迷惑をかけたくない」と拒んだので、おかげで自分が知らされたのは退院後だった。('ω')
ふ~ん。同じひとり暮らしのヨウコさんはひそかに唸りました。結婚したむすめは別の家庭のひとなので、実の母親といえども一線を画さなければならない。日ごろの信条を実践しただけに過ぎないことが容易に推察されるのですが、むすめの立場としてはそうもいかず、母親の病状への心配はもとより、周囲の視線も気になるようで。
自身で救急車を呼んだ気丈な母が、あのときどれほど大変だったかを何度も語りたがるのがいや「そういう人生を選んだのは自分なんだし、いまさらですものねえ」と嘆く後輩に思わず「それは正論だけどね、一所懸命に生きた結果の現在なんだから、ひとりでよくがんばったねと褒めてあげたらいいんじゃない?」と余計なお世話を。
🪲
こういう話になると、黒い翳を伴った記憶が起ちあがるのは八年前の夏のこと。会社解散のあれこれでとつぜんパニック障害を発症し、呼吸の仕方が思い出せなくなったとき、どうしても救急車を呼ぶという発想に至らず、ハンドルにしがみつくようにして夜間救急外来へ駆けこみました。それから丸六年の闘病生活が始まったのです。
赤信号も目に入らないような状態で車を運転したこと自体が重大な交通違反ですし、万一事故を起こしていたらもっと大変な状況を出現させていたろうとぞっとしたのは壊れたメンタルが継ぎはぎながらも修復できたのちのこと。ただ、いまも深夜に目ざめたときなど、吐いて吸う呼吸法を忘れていないか不安になることがあります。
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とここまで書いたところで某テレビキー局から電話がありました。見知らぬ番号に出たのは知り合いの知り合いを通じて事前に連絡があったからで、要件はまたしても閉業前の業績の二次使用の許可願い。即座に拒否しましたが、本当にもういい加減にしていただけませんか、一般人がいつまでそういうことにおつきあいすればいいと?
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