第386話 太腿 🚙



 その一節を目にしたとき膝を打つ思いでした。なぜって「今日はいかに安くあげたかを人生の最大目標にして生きている」とは、ずばりヨウコさんのことでしたから。名乗るほどのものではない(笑)自分なんかのためにはたとえ一円だって浪費したくないのは、その一円に泣いたむかしの貧乏性が抜けきれないからかもしれません。


 記憶というのはおかしなもので、うれしいことより辛かったことの方が箱の上部に近いところに収納されていて、折にふれて引っ張り出しやすいようにできているように思われます。スムーズに運んだツアーよりも、飛行機が飛ばないとかシャワーから水しか出ないなどアクシデントつづきの旅のほうが、思い出に残ったりしますから。



      🧞‍♂️


 

 車の運転をしているとき、ふいに左の頬に緊張が走ることがあります。気に入らないといきなり助手席からとんで来る鉄拳の恐怖をいまだに太腿が覚えているからで。アラブ圏の女性が外で顔を隠すかどうかは夫の意向によると聞いたことがありますが、あのころのヨウコさんは日常の所作から選挙の投票先までがんじがらめでした。


 いつまでも過去にとらわれるのはやめよう、生来のネクラ体質(と言われていました(*_*;)に拍車をかけるだけだからと決意して久しくなりますが、これがなかなかでして……。で、せめて連作俳句では生来の(笑)ポジティブシンキングを取りもどそうと、ときどき『サンダル 👡』のようなお遊びを入れたいなと考えています。




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