第382話 宵待草 🌼
どこに隠れていたのか(笑)とつぜん出現したミドル男性がいまどき「女子ども」発言をしたというので、ヨウコさんの脳裡をよぎったのは、ある本で読んだばかりの竹久夢二さんの実相らしき描写でした。肩幅ひろく、骨組みのがっしりとした体躯、浅黒い大きな顔にぎょろりとした目で、一瞬で目の前の女性を値踏みする……。:->
これまで数多の資料でその人に接したつもりになり、なんとなくですが、撫で肩の華奢な肢体のフェミニストのイメージが定着していたのは「まてどくらせどこぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月もでぬさうな」のどっぷり濡れぬれの感傷がもたらす効果にほかなりませんでしたが、なにこれ?! ぜんぜん様相がちがうじゃないのよ。
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もっともよく考えてみれば、妻のたまきさん以外に、彦乃、お島、お葉さんと手当たりしだいに渡り歩いた漁色漢がフェミニストなんかであろうはずがないのですが、如何にもの感じの際どい蓬髪で大正期の女性たちを虜にしたらしい抒情画家と、冒頭のミドル男性氏に、うさん☆◇△という名の同じ匂いを嗅いでいるヨウコさんです。
ついでにご紹介すれば、当時の日本の大方の男性の粗野なふるまいには驚嘆すべきものがあったようです。とりわけ威勢をふるった軍部の将兵たちは、路面電車の行列を蹴散らして乱暴に乗りこみ、停留所に取り残された女性たちに口笛を浴びせながら面白そうにからかっていたとか。いったい彼らの母親は女性ではなかったのかしら。
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ところで、昨日の拙稿に、もっとも大事なことを書き忘れていました。戦争未亡人の寅ちゃんも、いろいろあった(笑)ヨウコさんも、それぞれの子どもたちにとっておとなの事情は一切あずかり知らぬことですから、問答無用で完璧な母親を全うすることは当たり前なのですよね。それは時代を超えて普遍性のある真実なのですよね。
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