第361話 鷺草と常盤塚 🌼



 鷺草という不思議な造形美に惹かれたのは、歳時記でその存在を知ってから。

 清楚な純白で、両羽をひろげて白鷺が飛ぶ、優雅なすがたによく似ています。

 花言葉は「神秘的な愛」で、東京・世田谷区の「常盤塚」に伝説があります。


 

 ――鷺草のそよげば翔つとおもひけり    河野 南畦

   鷺草にかげなきことのあはれなり    青柳志解樹



 江戸前期、世田谷城主・吉良頼康には十三人の側室がいましたが、もっとも寵愛を受けていたのは常盤という名の姫で、懐妊すると頼康の寵愛はさらに深まりました。十二人の不興を買うのは当然で(このあたりの配慮のなさはどうでしょう:筆者)、みんなで策を練り、城内一の美丈夫との不義密通&懐妊のうわさを流したのです。


 常盤のニセ付け文を信じた頼康(軽率ですよね~:筆者)は美丈夫の臣下を誅殺。間一髪で逃れた常盤は自害しましたが、その直前、可愛がっていた白鷺の足に遺書を結び実家へ解き放ちました。胎児の胞衣に吉良家の桐の家紋があらわれて頼康は真相を知ります。一方、力尽きた白鷺が墜落した場所にはのち真っ白な花が咲いて……。




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