第308話 お金はだれのためのもの? 📚
なんだろうねえ、このもやもやしたどよ~ん感は……。静かな日々に届いた一通のメールでこんなに心を乱されるとは、なんと軟弱なんだろうわたし、とヨウコさん。胸を粟立たせるちりちりは嫉妬? それもありそうだけど、それだけじゃない、問題の本質は、究極のエゴイズムと呼ぶべきものを唐突に見せられたことへの途惑い。
知人が二冊目の本を自費出版するというのです。昨年はエッセイ集でしたが、今回は創作、それも数十年前に執筆したものを手直ししてという、ええっ?! な話。東京の専門業者に依頼した前回は、二百余万円の費用がかかったはずですが、今回も同じ業者に発注するそうで。謳い文句の“流通”とは名ばかり、即忘却の倉庫行きなのに。
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よくそんなお金があるよね~。というか、たかが自己愛のためによく平気で大金を使えるよね~。生きていくための栄養を給食に頼る子どもたちや、働いても働いても貧しい暮らしから抜け出せない若い世代が少なくなく、当方とて七十七円の小松菜を求めて安売りスーパーへ走る身、現実社会とかけ離れ過ぎているでしょう、感覚。
思えば同じ閉業の憂き目にあった同士ではあるけど、銀行が勧めるM&Aに乗って事業を売却し、老後の夫婦の潤沢な資金を確保した先方 VS 文化を知らない異業種にいいとこ取りで業績を汚されたくなくて、実より名を取ったヨウコさん、この差異がいま明確になっているんだよね。自分の選択をいまも悔いてはいないけど……。
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寝不足の未消化のまま郊外の朝カフェに向かうと、あらら、早くも水が張られた田んぼに青々と稲が植わっています。薄墨色に遠のいた山並みを背景に、沿道の公園や校庭には、薄紅や純白の花水木や山法師の花びら or 孚が清らかに……また都合よく無償で編集作業に使うつもりでしょう(*_*; ぐちぐち考えている自分があさましい。
多忙を理由に珈琲の誘いは断ったので、時期を見て「頼まれ仕事はまだ数年つづきますし、ミニマリストですので紙の本のご寄贈はお気持ちだけで」簡単なメールを送ったら、この件は忘却のフォルダに封印しよう。社会に稼がせてもらったお金は社会へ還元する。これからはモラルを守る、きれいなひととだけ交流するの。(*´ω`)
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