第292話 むかしの作家の冷徹ぶり 🎩 



 萩原葉子さんが『父・萩原朔太郎』を上梓したとき、草野新平、佐多稲子、西脇順三郎さんら当代作家連が居並ぶ出版記念会で、亡き父の親友だった室生犀星さんから「葉ちゃんがこれから作家として立ってゆくようになろうとなるまいと、自分の知ったことではない」と突き放したスピーチをされ、あまりの衝撃にトイレで号泣した。


 そういう記述を拝読して、そういえば、あの方も……むかしの記憶がよみがえりました。詩人・作家・評論家・翻訳家として文壇に知られていた長老、女子大の教え子に自著の帯巻への短文を頼まれたまま何年も放っておき、ようやく書いたと思ったら推薦どころか相当な辛口批評だったので、本人をはじめ周囲がいたく困惑したこと。


 親しい間柄でも、心にもないことは言えないし書けない。両者共通の古武士魂のようなものがあるような気もしますが、双方とも相手が年少女性だったことに因果関係のあるやなしや。ちなみに、かつてヨウコさんが後者の祝賀会に出席したとき、埴谷雄高さんら辛口友人連の上げたり下げたりのスピーチ、さすがでした~。(*^。^*)




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