第288話 親と子と、それぞれの道 🚞



 朝カフェのとなりの席は、三十代半ばぐらいの息子とその父親らしいふたり連れ。会話が途切れないようにする気づかい無用の安定した関係性は、見知らぬオバサンであるヨウコさんの席にも伝播して、落ち着いた空気感の一画を醸成しています。


 必要最低限の声量で淡々と話しながらモーニングを食べ終えると、白髪の父親は、店内に備えつけの新聞をひろげ、パソコンを開いた息子は一心にキーボードを打っています。時おり不明点を父親に確認する口調は、上司に対するそれに変わっていて。



      🎹



 あ、なにかの事業を息子さんに継承中なんだね~。ちょっと、うらやましいかも。うちにもこんな息子がいれくれたらなあ。うっかり、ないものねだりが胸をかすめ、いやいや、いやいや、絶対にあり得ないでしょう、最たる斜陽産業の承継なんて。


 現実に引きもどされると、心なし天井から降って来るBGMのピアノ演奏が激しくなったような……。そういえば、わたし、親の期待をあっさり裏切ったんだっけ。ま、仕方ないか、思うに任せないのが人生だし、親子だってパーソナルだしね~。




      🥁🎺   🥁🎺   🥁🎺   🥁🎺 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る