第253話 川に添う枯葦のように 🌾



 ただでさえ乾きがちな目をパソコンや本、テレビで日々酷使しているヨウコさんにとって、ドライアイ対策用の目薬は一日として欠かせない常備薬ですが、つぎの検診までなんとかもってくれないかという懸命な祈りも虚しくなって来たので、真冬並みの余寒が一応は収まったらしい早春の朝、重い腰をあげて眼科医院へ出かけました。


 九時に近い時間でしたが、街に至る国道は渋滞しており、長い橋の上で信号待ち。反対方向をトラックやクレーン、トレーラーなどの大型車が通るたび「重すぎて堪えきれません」と言うようにゆっさゆさ揺れるので、あまりいい気持ちはしません。で、視線を横に流すと、鋼色の紙を貼ったような川面がゆったりカーブしています。


 その流れに寸分の抵抗も見せず、まったく同じ曲線を描いている枯葦の川原。見慣れた光景にあらためて感じ入るものがあり、古今の俳人たちが人生行路にたとえずにいられなかった心情に素直な共鳴を深めながら、保管数が少なくなった目薬をちまちま使うなど姑息な手段で(笑)自然の流れに逆らおうとした小器を恥じ入りました。




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