第241話 堪えて来た冬の傷あと 🚪



 どういうわけか、毎年春の気配が聞こえ始めると、決まって右手の甲のアカギレがひびわれるんですよね。利き手ゆえ使う頻度がはげしいのかも知れませんが、自分の手ながら痛々しいほど赤くただれ、芯の部分には孔まであいてジクジクと痛みます。常備薬を塗れば症状は薄らぐのですが、完治には三月or四月を待たねばなりません。


 この傷を見るとヨウコさんは思うのです、わたしたちみな黙って寒さに堪えて来たけど、なんとか言い含められる心とちがって身体は正直だから「もう我慢できない」と音をあげるんだろうね。彼の自衛隊の新人ですら昨今は褒めて育てるとか。とうに根性論の時代じゃないけど、それでも心は健気にがんばろうとするんだろうね……。




         🪞🪟  🪞🪟  🪞🪟  🪞🪟 




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