第227話 もうどうでもいい 👟
川沿いの道を左折すると、うわわ~っ、一気に光があふれました。長くてきびしい季節の終わりを告げるかのように、広大な平野にまばゆい陽光が満ち満ちています。真っ青な空のもと、ふもとの集落まで見通せる東の山並みも西の山脈もはなだ色にやわらぎ、こじんまりと清潔なビル街がおもちゃの国の街みたいにきらめいています。
毎年この時期になると感嘆の声をあげたくなる、強い光&濃い影に彩られた風景。なんて美しいんだろう、わたしが住む街は……天地が奏でる荘厳な自然讃歌に共鳴しながら枯色の田園地帯を東西に横ぎって各駅停車の小駅の跨線橋を渡ると、飲食店や車のディーラーが華やかな軒を連ねる国道で、目的のモスバーガーも間もなく……。
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朝モスの時間は過ぎていたので、ランチメニューから選択していつもの窓際席へ。仕事時代にランチに寄ったときも同じ席で、向かいのブティックもおなじみのお店。あれから何年も経って自分も店舗も年齢を重ねたけれど、ずっと変わらず食を支えてくれているんだよね、見慣れた制服できびきびと立ち働くスタッフさんたち……。
感慨に浸っているとなんの脈絡もなく「惨め」というフレーズが湧いて来ました。わたしがもっとも惨めだったころのことも、このお店は知っていてくれるんだよね。地元紙に恣意的な記事を書かれて四面楚歌だったあのころ、会社やスタッフ、家族を放って逃げるわけにもいかず、精いっぱいの虚勢を張りつづけるしかなかった。💦
🎧
うわさが消えるまでに七十五日どころか何年もかかったけれど、大方のみなさんが思っていたろうね、あんなことを書かれて平気で笑っていられる、なんて厚かましい女なんだ、よくもまあ、いけしゃあしゃあと、目ざわりだからとっとと消えてくれ。どこへ行ってもそういう視線に刺されてずたずただったけど、堪えるしかなかった。
高校時代まで内気で無口、すぐ真っ赤になる地味な少女だったのに、いつの間にこんなに強くなったのかわれながら不思議だった。大切なものを守るために自分がどう見られてもかまわなかった。本当の事情を知らないのに氷の視線を向けて来た人たちにも平等の歳月が流れたいま、自分がどう思われていても、もうどうでもいいよ。
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