前のエピソード――第203話　たったひとりの理解者　🎥

　読みたくもない本を読まされ、書きたくもない感想を書かされる事態の連続に音をあげているヨウコさんが自費出版と聞くと掌をつっぱりたくなる理由がもうひとつ。すなわち、プロの編集者や読者、さらに傍証者というきびしい関門をひとつも通っていないことで、江戸時代の出女入鉄砲並みの由々しさでは？（笑）とひそかに……。

　だれのチェックも受けず世に出たものでも、紙に印刷されれば一定の事実と見なされるのが活字の魔法、そこに不気味な闇が蹲っています。たとえば戦争体験手記では戦友を救ったのは実は別の戦友だった、反戦を謳っておきながら実は好戦だったなどの例が過去にあり、とりわけ美談っぽいエピソードには検証の必要がありそうです。

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　聞くところによれば、某文学賞の受賞作にチャットGTPの作成文がそのまま掲載されているとか。もしそれが本当なら、クリエイティブに対する作者の姿勢もどうかと思いますが、それを通した審査員の鑑識眼にも疑念を覚えないわけにいきません。当今の同賞受賞作品が総じてつまらない理由、このあたりにひそんでいるのでは？

　それに関連して、関所の洗礼を受けず出版された数多の戦争体験手記を基礎データとする生成 AI による作文があたかも不動の事実であるが如く定着するのだとしたら深刻な社会の歪み＆捩じれを招くのではないか、そんな懸念が沸々と湧いてきます。科学＆医学分野のAIのさらなる活躍のため、文化のご都合主義は遠慮すべきかと。

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