第99話 国境という地上絵 🌐



 中国政府が掲げる「一帯一路」策が十年になるそうですが、現代版シルクロード的野望の半分は海のルートとはいえ、広大な陸つづきという地理的条件がなければ成り立ちません。その中国を旅したとき、香港との国境の深圳しんせん駅で列車内の検問があり四方を海に囲まれた日本では考えられない越境を実感した記憶がのこっています。


 ロシアによるウクライナ侵攻の悪夢だけでも、もうもうたくさんだったのに、その衝撃をはるかに超えるイスラム組織ハマス VS イスラエルの深刻な紛争勃発で世界中が慄いているいま、歴史も文化も、傷つけることへの考え方や痛みの感じ方も異なる国からのいきなりの侵攻の懸念という緊張状態にある大陸諸国に対し、江戸時代には鎖国のシチュエーションも罷り通った「一島一国」の特性を認識せざるを得ません。



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 海峡という天然の要害に守られている秋津洲の憶病な住人としてとりわけ恐ろしく思われるのは、歴史的に日常的な暴力に馴れきっているように窺える粗暴な国によることもなげな隣国への侵略行為。ひと筋の地上絵でしかない国境を易々と越えて来るバイオレンスを想像しただけで、どうしていいか分からないほど惑乱します(秀吉の朝鮮出兵&現代史の満洲国建国など日本の侵略史はひとまず置くとして m(__)m)。


 目と鼻の先にイスラエル人の豊かな生活を見せびらかせながら「天井のない監獄」の住人二二○万人に、じつに十六年もの長きにわたって物心両面の非人道的な困窮を強いて来た世界各国の怠慢を思うと言葉もありませんが、その一方、あの土地がどちらの民族のものかはっきりさせられない状況では、紛争終焉の糸口すらと……。💦



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 それにしても、広島のパフォーマンス、あれはいったいなんだったの? いまさらながら唖然とするのです。貧民層の出自から大国のトップに上り詰め、無難に政界を引退したあとは夫婦でセレブ生活を楽しんでいると聞くあのリーダーも、不条理の極を重々承知しながらなにもしなかった……ひそかに応援していたのにがっかりです。


 まさかのことに漁夫の利を狙うPプレジデントと同根とは思いたくありませんが、おしなべて言えば為政者にとってのヒューマニズムは勝ち抜くための看板に過ぎず、敢えてナショナリズムなど先導しなくても国民が勝手にそっちへ動いて莫大な利権をもたらせてくれるのですから、当たり前に自国の便益最優先なんですよね。"(-""-)"



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 イスラエルの報復地上侵攻が実質的に始まっているようで、北部の居住地から南部への移動を指示された一○○万住民が車や驢馬に家財を積んで逃げ惑うなかへの容赦ない攻撃で数多の犠牲者が出ているとか。とりわけ幼い子どもたち。(´;ω;`)ウゥゥハマスへの報復がなぜか罪なき民衆攻撃にすりかわっている不思議にも絶望します。


 いまこそ渡れ渡り鳥。宮沢賢治さんに倣って言いたいです。こういう際の政治家でなくてなんの価値がありましょう。各国首脳は即座に現地に飛んで、世界のリーダーの誇りをかけた一世一代の解決策を生み出すべきでしょう。パレスチナを巡る二千年の闇の幕引きが適ったら、それこそ世界史に名を残す絶好のチャンスかと存じます。




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