第90話 風 🍃
鈍い曇りが割れたと思ったら なんだか風が出て来たみたいだね
ほら にわかに秋めいてきた庭の枝葉 いっせいに騒めいている
形状も 音も 色彩も 匂いもない 得体の知れない存在だけど
この天地を縦横無尽にかけめぐることを許された唯一無二だよね
古今東西 哀歓 いろいろなものを見てきたんだろうね たぶん
あまりにも 多くを見て なにも言えなくなったのかな きっと
🫧
そのうちに わたしたちも あの一部になるんだろうね たぶん
言いたいことを胸にしまって ただただ吹くんだろうね きっと
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