第78話 モートン病のこと 👠



 暑すぎて散歩に出かけられない夏をいいことに忘れたフリをしていた慢性モートン病をヨウコさんに思い出させたのは、朝のルーティン筋トレをしながら録画で観たEテレ『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 八十年代』のむんむんする熱気でした。


 テクノポップス、コピーライター、TOKIOなどのカタカナ言葉が飛び交い、坂本龍一、糸井重里、林真理子、辻井喬、沢田研二、映画『私をスキーに連れてって』の原田知世など華々しいスターがつぎつぎに出現して、狂騒日本が世界に名を馳せた。


 たしかにそんな時代に生きながら、ものすごいスピードでまわりつづける円柱から振り落とされまいと必死でしがみついていた自分……どこからどう見ても地方の冴えない姉ちゃんであるヨウコさんは高いヒールなど一度も履いたことはなかったのに、なぜか頭の内では真っ赤なハイヒールで原宿あたりをのし歩いたことになっていて。


 で、その時代のツケが左足指の付け根にまわされ、ほおら、ごらんあさあせ、あのころさんざんに酷使した仕返しが、いま来ているんでござあますわよ、お~ほほほ、だれかに嘲笑われているような気がしてならないのですけれど、実際はダッサい黒のパンプスしか履いたことがなく、踵の高さはせいぜい三センチがいいところ、なのにあのころ苛められたと訴えるようにピリピリ痛むのですよね、左足指の付け根……(部位の神経が炎症中、平たくいえば足裏にずっと傷を負っている感じです💦)。


 


      👟




 さすがの猛暑も鳴りをひそめ始め、今度こそ秋が来るみたいだから、正しい歩き方で気持ちよく散歩に出かけたいよね、そのために本格的な治療を考えてみようかなと思い立ちネット検索してみたものの、いままでもそうだったように目ぼしい治療法は見当たらず、手術に至っては高額な費用と何日もの入院が必要らしいので、即却下。


 自力マッサージとか靴の選び方とか歩き方とか、すでに熟知している情報ばかりで新鮮な情報はまったくなし。つまりは完治は望めず、これ以上痛くしない予防策しかないことが再認識され、がっかりした分だけ疲労も濃く、朝から、どよ~んでした。




      🚶‍♂️




 落ち着いて考えてみれば、浮かれ時代の恩恵など欠片も受けていない地味な人生のツケなどあるはずもなく、思い当たるのは赤子を背負いながら十キロ前後の重い荷物を運ばざるを得なかった仕事のツケぐらいで……まあ、いずれにしても取りもどせる過去なんてないんだし、いたずらな悔恨や反省はいまさら意味がないのですよね~。


 で、気持ちを取り直し、年ごとに短くなっている爽やかな秋を存分に楽しむため、少しでも痛みが少なく穏やかな散歩に行かれるように、とりあえず効果のほどは定かでない自力マッサージを施してみようかなと、地味な結論に至ったヨウコさんです。


 激痛に堪えかねて飛びこんだ夜間緊急病院で生涯不治を申し渡された肩の石灰化も自力で緩和させてなんとか今日に至った経緯があるのですから、部位の神経が病んで稼働しなくなって久しい現象も、根性で(笑)治せるかも知れないですし。( ^)o(^ )




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