第124話 野紺菊 🌼



掛け布団のえりのあたりが ひんやり冷たい早暁

何度目かの霜が降りて あたりを銀に染めました


庭に出された犬は 爪先だってふるえてみせます

仕事に出かけるかあさんに 家に入れて欲しくて



      🐕



そのとき 犬は黒い鼻面を ひくひくさせました

凍った大地を 沈んだ微香が 這ってきたのです


匂いの主は 路地に立ち枯れた ひと群れの残菊

花だけど花じゃない 花だったころの記憶の形状




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