第16話 啄木のうた 🛖
連日の熱帯夜に抗する手立てといえば、氷枕&生ぬるい扇風機ぐらい。床より何十センチか高い分だけ熱気がこもっているベッドは避け、リビングの長座布団に寝る。
そんなひと夜をまた重ね、何度目かに目を開けたら午前四時だったのでラッキー!!掃除、カクヨム、筋トレ&ヨガのルーティンのあと開店直後のモーニングカフェへ。
あまりの猛暑を見かねた隣人の計らいで、エアコンの修理を業者に頼んであるが、下見後いまだに連絡がないので、いっそのこと、このまま秋を迎えてもいいのかな。
でも、せっかく頼んでもらったんだから辞退などできないよね……ぼんやりそんなことを思いながらバッグの文庫を開くと、いきなり懐かしい短歌が飛びこんで来た。
――函館の青柳町こそ悲しけれ友の恋歌矢車の花 石川啄木
高原の夏木立にひっそり咲き出た竜胆のブルーのように、みずみずしく新鮮な歌。
なにより圧倒的な詩才のみが放つ馥郁たる香気の前には、ひれ伏すしかない想い。
啄木は古くさい、そんな風潮に易々と染まり、本質を見失っていた身を恥じ入る。
銘品は歳月に磨かれてますます渋みを増すものなのに、利休時代の茶器のように。
🍵
冷房の利いた窓の外、カンカン照りの駐車場に宅配便の車が止まり、見慣れた制服の青年が台車に段ボール箱を目の高さまで積み上げて、カフェの玄関へ押して来る。
こんなところでひとりだけ楽をしていてごめんなさい。申し訳なさに目を逸らし、生涯、労働や生活苦と縁がきれなかった北の歌人の短い、振幅の生涯に思いを致す。
そこから派生させた十七文字の俳句ではどうしても詠めない、肌えの体温が色濃く宿る三十一文字が、日本人の文化の真髄として絶対的な命を長らえている幸いに💧
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