芝居が得意な冒険者でどうしろと!〜特定条件だけ最強になれるかもしれない俺の話〜

行徳のり君

第1話 プロローグ ~世界を善意で滅茶苦茶にした人について~

 説明しよう! 

 この惑星は転生者に汚染されている!

 

………昔々の話である。


 世界が丸くて、太陽と月々(誤字にあらず)が世界を中心に回っているのでなく、太陽を中心に回っていることを発見した哲学者がいた。

 彼はアジアの巷で大ブレイク(IQが高いとは言われない)な賢者ではなかった。


 なので、絶望した。


 だって世界の中心が太陽なら、天の上の神の国も嘘だし、邪教が言う天地創造も嘘だと気づいたんだもん。

 で、彼は、じゃあなんで魔法が使えるのか? と考えた。

 考えて考えて、彼は分からなかったので、彼は神に聞いてみることにした。


……何故、神が話を聞いたかとか、実在したとかは聞いてはいけない。


 そして彼は神に真理を願った。

 ここまでは良かったのだが、神はちょっとしたミスを起こす。


……男に真理として与えるべきは知識であったのに、神は盛大に過って――次元の狭間に投棄されていた―――マーマイト・焼きキンパ(中国産?)を下賜した。


 神の国の食べ物テオブロマだ! と彼は食し、そしてアレになった。


……確かにこれは変態の劇物テオブロマであった。


 ビール酵母の力が彼に独逸人的変態的技量どいっちぇらんどぜいでを、

 味わいから英国紳士的変態要素ぶりてぃっしゅさいどを、

 黒い美しさから仏蘭西人的変態要素らふらっしゅるさんとを、


 彼は全て取り込んだ。


 なお露西亜魂らてぃーなりつぉー伊太利男いたれさどあーのっぷりは事前学習済みである。

 

 それと同時に、


 海苔から日本面ほわいじゃぱにーずぴーぽー

 米食から悪しき儒教文化あじあーん

 そして何故かブッディズムとヒンドゥースタンス。


 余計なものまで彼は摂取した。

 そして男は、気づいた。だから思った。


―――この世界の答え合わせは、神の国(=地球人)に任せようと。


 彼は自分を触媒にして、半永久式の誘拐魔法だれものぞまないろすとてくのろじーを開発すると、魔法となり果てた。



 それから千年、この世界は色々と大変なことになった。

 まず地球から少なくない人間が送り込まれ、それが止まらなかった。


 でも魔法は消えなかったし、人間にエロい事したり乱暴したりする魔物は元気だった。でもって、そんな状況でも、人間は意外と大丈夫だったし、戦争するような余力もあった。

 

 まあ、その背後で内政チート持ち男が触手畑に消えたり、

 聖女が群衆に囲まれてナマ説法(意味深)を強制されたり、

 ほのぼの系女領主が修羅道に堕ちて龍に成ったりした。


―――しかしそれは、本筋ではない。

 

 繰り返し、説明しよう! 

 この惑星は転生者に汚染されている!


 普通に身分階級があるような時代なのに、乙女ゲームのようなふんわり女性進出が確約されていたりとか、モテなかったユウシャーらのせいで、男転移者の眼鏡+デブorガリは聖職者とされたり(そして発見され次第、彼らは拉致監禁され一生妻帯禁止を言い渡される)、湿潤とは無縁な土地柄なのに代用醤油があったり(味噌は見た目で断念?)、ニンジャ神話が通じたり、チキン屋が伝統だったり、ヌーディズムが跋扈していた。

 

 こんな文化が世界に根付いてしまうほど(と言っても、中世風の一地域が重篤なだけなのだが)、異世界転生で転生者がイキれたのは、チートゆえ……!

 

 ちなみに転移者・転生者へのチート特典付与は「別世界に拉致されたのだから」との神? 賢者? の親切心からであったと思われる。


 だが転生者・転移者たちは、自衛のためにチート特典を悪用した。

 同人の即落ち展開である。

 けれども「人だしいずれ過ちを犯す」と、神?は意図的にチート野郎どもにタイマーを仕込んでいたのだ!


 そう、誰が呼んだか『唯の人タイマー』!


 このタイマーが発動すると、悪しき使い方や、物心の分別が付くようになると言われ、かつチートが大人になる優れモノである。

 具体的には能力がデチューンされるのである、悪いことすると。

 

 これにより世界の運航は原住民たちの手に戻るかと思われたが………まあ、そのあれだ。


 どこにでも「ハネっかえり」や「サイコ野郎」はいるもんである。

 地球で培った自前の知識や不断の努力、そしてあくなき欲望。

 それらを駆使してイカレた奴らは自力でなんとかした。

 

 食料系の日本人商社マンが、同じく転移してきた鎌倉・室町武士の信頼を勝ち取ってヨーロッパ風の地域で「ザ・日本」である国をぶち上げたり(そもそも日本ぽい国は存在していた)。

 マイセンの陶芸職人が土魔法一本で大陸最初の皇帝(末裔は辺境の島で引きこもり)になったり、集団転移した学生たちが大半島の独立(現皇帝家)を勝ち取ったりと色々あった。


 けれども、大半は最終的には現地民と融和した。


……ただ例外はあるっちゃ、ある。


 ガチめな人としてアカン輩が人間離れしてみたり、魔王への転職などだ。

 そんな、魔王が数世紀ぶりに復活した。


 誰もお呼びでないのに!

 今代の魔王はKYであった(そんなんだから転生・転移しても魔王なのだ!)!


 ただ、お前らの出身地の責任だろ! という事で、少なくない転生者や転移者が皇帝の勅令を受け、ユウシャーとして魔王討伐に送り込まれた(この世界の勇者は異世界人や転生者の称号である)。

 古き良きゲームブックやT・RPGの形である。勇者は絶対正義なのだから。


……ただ、思い出してほしい。


―――この惑星は転生者に汚染されている! のだと。


 これは勇者のツエーではない。

 後始末を任された、ババ引いた奴の喜劇である。

 一人の男がその喜劇の役を演じることとなった。

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