第2話 ここで装備していくかい?

私、アリサ!

明日は私の15歳の誕生日。

この国では人間の成人年齢は15歳。

明日からは冒険者ギルドに登録して一人前の大人として稼ぐんだ。

剣の練習を重ねてきた私は冒険者として華麗にデビューして見せる!

ああ~。明日が楽しみだな。

今日はもう寝ようっと。


そして早朝6時に目を覚ますと私の頭の中身はすっかり変わっていた。

思い出した。前世の記憶を。

まずは装備を点検する。冒険者として最低限の荷物は揃っている……と言いたかったが残念なことに武器と防具をちゃんと買っていない。

ロングソードの両手持ちはかっこいいかもしれないが、当たらなければ意味がないし、左手に盾を持つことができないのでは生存率も大きく下がる。


所持金を確認し、安堵する。

小盾バックラーを購入する程度の残金はあるようだ。

それにロングソードを下取りに出せば安い槌鉾メイスに買い替えることもできるだろう。

この世界(正確にはこの世界を舞台とした前世のTRPG)の装備可能な武器は種類ごとに特性が異なる。

なかでも槌鉾メイスは低レベル帯において頭ひとつ抜けている優秀な装備だ。

同じ重量の刀剣に比べて、クリティカル発生率が低い代わりに命中固定値が高く、その命中率の差はレベル1つ分に相当する。

同様に小盾バックラーはダメージ軽減はまったくできない代わりに回避率補正が高く、これもまたレベル1つ分に相当する差がつく。


もし女神の与えたチートが機能しているなら今の私の戦士ファイター技能レベルは通常よりも1レベル分、高いわけで装備を合わせれば2レベル分のアドバンテージがあることになる。


サンプルシナリオのボスとして出てくる敵はこの命中回避が異様に高く、仲間内ではデスシナリオとして通っていた。

剣を持ち込んだ場合の命中率が3割を斬るため、まともな初期作成冒険者ではボスに敵わない。

しかし、レベル+1のチートを持つ私が槌鉾メイスを振ればボス相手でも命中率は5割を超える。


これだけ準備しても5割そこそこでしかない。

はっきり言ってこのままでは基本的に勝ちの目がない。

転生し、記憶を取り戻して早々に二度目の死が待っている。


だが、このゲームでは最初のレベルアップで戦闘スキルを獲得することができる。

つまり今日、冒険者として登録した段階で他人より戦闘スキルをひとつ多く習得できる。

ここが成否の分かれ目、いやゲームではなくこの世界が私にとっての現実になった以上、ここが生死の分かれ目だ。


レベルアップで【牽制攻撃】スキルを習得できればボス相手の命中率は7割を越える。そこまでしてようやくこの世界にありふれた冒険者の死を乗り越えられる。


レベル+1。

些細なチートに思えるがこれこそが私の見出した活路だ!

さあ、冒険者ギルドへ向かい冒険者記録用紙キャラクターシートを登録するとき……!


「こ、これは……!」


ギルドの受付嬢が困惑した顔で私の冒険者適正結果を通達する。


【名前】アリサ・アポーチェ

【種族】人間

【技能】

戦士ファイター2レベル

格闘家グラップラー1レベル

軽戦士フェンサー1レベル

舞剣士バトルダンサー1レベル

射手シューター1レベル

盗賊シーフ1レベル

精霊術師シャーマン1レベル

死霊使いネクロマンサー1レベル

魔神使いデーモンサマナー1レベル

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