第127話 すぐに中止なんて勿体ない!
《パウラ・ベルベット
「……」
私は、
そして、すぐに気付いた。
……うん! AクラスにFクラスの動きを漏らしている人がいますね! ――と。
だってAクラス、明らかにFクラスの動きがわかった上で自クラスの生徒たちを展開させてるじゃないですか。
Aクラスにカーラさんのような使い魔の使役者、または透視系魔法を扱える
〝声〟だけ伝えるなら、私たちに監視されながらでもある程度バレずにできますしね。
……さて、どうしようかな?
試験への不正介入があった時点で、本来なら犯人捜しに動くべき。
でもなぁ、まだ
だから、あんまり安易に動きたくないんですよね。
そもそも、向こうだって私のことを監視してるでしょうし?
どうしたものでしょうか。
一応、教育者としては試験を中止すべきではあるんですが……。
……。
…………。
…………………。
――
惜しいなぁ、やっぱり。
生徒同士が全力で潰し合うお祭り――それもトーナメントを勝ち抜いた強者同士の潰し合いだなんて……こんな最高の娯楽、すぐに中止にするなんて勿体ない!
もう少しくらい観戦してもバチは当たらないでしょう!
――よし、もう少し泳がせておきましょう!
うんうん、それがいいですね!
そうすれば、私ももっと
まあ、エースであるアルバンくんがいないのはちょっとつまらなくはありますが……。
――とはいえ、エース不在でもFクラスは十分に強いですから。
なにせ私の自慢の生徒たちですし。
それに……どうせこの事態も想定済みなんですよね、レティシアさん?
試験会場自体に
それ前提で組んだあなたの戦術……とくと拝見させて頂きますよ――。
▲ ▲ ▲
《カーラ・レクソン
「「アハハハハハハハ!!!」」
――アンヘラが処刑刀を、ディアベラが処刑斧を振るってくる。
小柄な二人が振るってくる長大・重量級の得物は距離感を見誤らせ、それでいて破壊力も抜群。
岩でできた
しかも攻撃時の連携が完璧。
アンヘラが正面から攻撃すればディアベラが背後に回り込み、ディアベラが背後から攻撃すればアンヘラが次の挙動に移る。
テレパシーができているのではないかと思えるほど、両者の連携に隙がない――。
攻撃方法がどうしても単純化するという重量武器の弱点を、上手く補い合っている。
「「どうしたの!? ねぇどうしたの!? 避けてばっかりじゃ面白くないわ!!!」」
「……」
アンヘラとディアベラの連撃に次ぐ連撃を回避し、私はシャノアちゃんの前にヒラリと着地。
「カ、カーラさん! だ、大丈夫ですか……!?」
「うん……私なら平気……。でも……」
私は、自らの頬に指先で触れる。
マスクが少し裂けたらしく、ヌチャリとした生暖かい液体が隙間から流れている。
指先を離して見てみると、真っ赤な血が付着していた。
どうやら彼女たちの攻撃が、僅かに頬をかすめたらしい。
これ自体は他愛のないかすり傷にすぎないが――。
「……魔法陣の効果が、消えてる」
「ふぇ……?」
「
「! そ、それってつまり……!」
「うん……たった今、試験は〝本物の殺し合い〟になった……」
――試験中、〝肉体に対して明確な殺傷効果のある攻撃〟は、特殊な魔法陣の効果によって無効化される。
ただ〝死亡判定〟となって身動きが取れなくなるだけ。
この場合の殺傷効果のある攻撃というのは、刃物による斬撃や刺突、または強力な魔法による攻撃などがそれにあたる。
一応の例外として、殴る蹴るといった比較的殺傷力の低い攻撃、あるいは攻撃を受けた側の肉体が殺傷に至らないほど頑丈であったりなどした場合、死なない程度のダメージが通るという場合はあるようだけれど。
中間試験の時、エステルちゃんはその効果を利用して殴り合いに勝利したみたいだし。
彼女、
だから拳による殴打は、肉体をちょっと傷付けることがあるかもしれない。
だが――刃物による斬撃は、確実に無効化されるはず。
私の身体は、別に刃物が通らないほど頑丈ってワケじゃないし……。
斬られれば普通に死ぬし……。
だから斬撃による攻撃は全て無効化されて、血なんて出ないはずなのに――。
……何者かが、
どうせエルザ第三王女の手の者だろうが。
でも――お生憎様。
これもレティシアちゃんは予想してたんだよね……。
私はアンヘラとディアベラへ視線を移し、
「アンヘラ……ディアベラ……
「「ふぅん、それで?」」
「……これ以上戦うと、本当に殺し合うことになる……。私は、無駄な殺しはしたくない……」
「「アハハ! 随分
彼女たちは私の忠告を笑い飛ばし、再び片手を繋ぎ合う。
「「私たちも殺し合いなんて嫌よ? だって私たちがしたいのは一方的な殺し――処刑だもの」」
「……」
「「それに魔法陣が無効化されたなら、本当にあなたたちの首を落っことせるってことじゃない。素敵だわ」」
「……つまり、あなたたちに停戦の意思はない、と……?」
「「あるワケないわ。さあ、もっと楽しみ――」」
――ドスッ
「「……あら?」」
――アンヘラの右肩に、投擲された
直後、彼女の可愛らしい衣服にブワッと血が滲んだ。
「……もう一度だけ言う」
私は新たな
「私は……レクソン家の〝教義〟に則り……無駄な殺しはしたくない……。死にたくなければ……今すぐに去れ……」
「「アハハ……脅しがお上手ね。でも嫌よ。ロイドに怒られちゃうもの」」
「……そう」
刹那――私は再び
瞬きするよりも速く
「あ゛っ」
ディアベラはアンヘラと手を繋いだまま卒倒し、頭部からドクドクと血を流す。
どう見ても
……私は
無駄な殺しはしたくないけど……殺すと決まれば容赦しない。
「……忠告はした。まだ逃げないというなら……アンヘラ、次はあなたの――」
「「……ウフフ」」
――――――――――
実はアンヘラとディアベラのキャラ造形には割と明確なモデルがおりますが、気付いた方は中々の映画マニアかも……?( ゚д゚ )
※書籍化します!
『怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました』
絶賛予約受付中……!https://kakuyomu.jp/users/mesopo_tamia/news/16818093076208014782
予約して……!( ´•̥̥̥ω•̥̥̥` )
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます