第63話 エステル凶騒曲
《エステル・アップルバリ
「「オラアアアアアッッッ!!!」」
ゴシャアッ!
という爽快な音を立てて、お互いのお顔にクロスカウンターがおヒットしますわ。
いいですわねぇ。
やっぱり〝お喧嘩〟はこうでなくちゃいけませんことよ。
「な、中々い~い〝
「あら……あなたの〝
おミシミシと頬骨が軋む音が脳みそに響き渡ります。
もしダンジョンに魔法陣が張られていなければ、顎が砕けていたかもしれませんわね。
私の骨って、相当頑丈なはずなのですけれど。
貧乏商家の娘だった頃は、お喧嘩中に背後から頭を
あの頃は〝
懐かしいですわねー。
……今日は久しぶりに、
この殿方、〝お喧嘩慣れ〟していやがるみたいですから――。
私と彼はバッと間合いを離して、
「そういえば、まだお名前を聞いていませんでしたわね。伺ってもよろしくて?」
「〝
「まあ、素敵な異名をお持ちなのね! 私の名前はエステル・アップルバリ! どうぞ〝
私がお優雅に自己紹介をすると、キャロルはとっても驚いた顔をします。
「……! アップルバリだと!? そうか、
「あら? 私の会社をご存知ですのね」
「ったりめぇヨ! 悪徳豪商に〝
まあまあ、私ってばそんな〝
なんだか照れちゃいますわー!
でも〝
私はただお喧嘩に勝って、正当な報酬を頂いただけですもの。
もし負けたらこっちの財産が取られていたんですから。
大変だったんですのよ?
「エステル・アップルバリ……俺ぁアンタに〝
「嬉しいことを言ってくれますわね。でも、私は〝
「いーや、アンタは〝
キャロルはグッとリーゼントを整えると、全身の筋肉に〝
「――〔
――次の瞬間、彼は全身の筋肉という筋肉がバキバキのムキムキに肥大化。
オークやホブゴブリンなんて裸足で逃げ出してしまいそうなほどの、ゴリマッチョメンに変貌を遂げます。
「ふぅん、〝肉体強化〟の魔法かしら」
「〝
「はち切れんばかりの〝筋肉〟……いいですわね、ウットリきますわ。でも――」
「あン?」
「――
タンッ、と地面を蹴飛ばした私は――キャロルの懐へと瞬時に〝
ギチギチッと右手の拳を握り締め、
「チェストおおおおおおおうううぅッ!!!」
「ごぉ――あああああああああああッッッ!?」
彼のどてっぱらに、思い切り〝
メキャメキャ!ゴキボキ!という鈍くて重い打撃音と共に吹っ飛んでいくキャロル。
とっても痛そう。
でもご安心なさって。
このダンジョンには魔法陣がありますから、幾ら殴ってもおっ
「おわかりになって? これが〝乙女の覚悟〟の重さ……そして純然たる気合と根性のみで鍛え上げた〝本物の
忘れもしませんわ……。
まだ貧乏商家の娘だった、あのつらく苦しい日々……。
お金がないせいで人も雇えず、身体が不自由なお父様は力仕事なんて無理。
それでもお店を盛り上げようと私は、一人で十人分の重肉体労働を毎日こなしておりました。
何十キロ、何百キロもある大樽を担いで、お店と倉庫を行ったり来たり。
とっても大変だったけれど、私には〝夢〟があったんですの。
いつか本物のお嬢様になるって――。
そんな淑女の淡い夢を胸に、ただひたすらに努力を続けた結果――私の〝筋肉〟は至高の領域にまで鍛え抜かれてしまいました。
以前、パウラ先生にも言われたことがありますわ。
『エステルさんの肉体は異常ですね! 〝肉体強化〟の魔法では、どんなに強大な魔力があってもこんな怪力は出せませんよ!』
『どうやら純粋な筋トレ――鍛錬だけで、あなたの〝筋肉〟は魔法を超越してしまったようです!』
ああ、努力と根性だけで〝筋肉〟が魔法を超えてしまうなんて……。
私ってば、なんて罪な女……!
でも――だからこそ断言できますわ。
私は、
「へ……へへ……! 今のは中々、〝
お腹を大きく陥没させながらお立ちになるキャロル。
あなたも大概に根性キマッてますわね。
よろしくてよ!
お店やお父様を守るために、地上げやチンピラと〝
「あら、今のなんてほんのご挨拶。ここからが〝
「〝上等〟だァ! 〝
「「行くぞオラアアアアアアッッッ!!!」」
――――――――――
※この作品はファンタジー小説です。
誓ってヤンキー小説ではありません(´·×·`)
初見の読者様も、よければ作品フォローと評価【☆☆☆】してね|ω`)
☆評価は目次ページの「☆で称える」を押して頂ければどなたでも可能です。
何卒、当作品をよろしくお願い致しますm(_ _)m
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