14. イメージ変わったよ
14. イメージ変わったよ
そんなこんなで近所のドラッグストアに足を運ぶオレ。とりあえず目的の牛乳は絶対必要だ。
そしてそのまま店内を歩き、コンドームを探す。いや、別に探しているわけではない。ただ念のためだ。するとお目当ての物は意外とあっさり見つかった。
「……いや。本当に買うのか?オレ……」
自分で自分に問い掛けるが当然答えは帰ってこない。もちろん万が一、億が一必要になる可能性もある。いやなんか持ってるとそれが目的とか思われたりしたらそれはそれで……。とか自問自答していると突然声をかけられる。
「あれ神坂じゃん」
「え?さっさっ西城彩音さん!?」
「なんでフルネームだし」
なぜここに西城さんが!?しかも今、オレはコンドームを買おうか迷っている。最悪だ……よりによって一番見られたくない人に出会ってしまった。
「何やってんの?」
「いや……あの……男の生理用品を購入しようかなと」
「ふーん。まぁエチケットだしね」
「ずいぶん寛容なんだな」
「高校生なんだからそのくらい買うでしょ。別に普通じゃない」
意外にも西城さんは何も言わなかった。なんか『キモッ』とか『お前ごときが買うなよ』とか言われそうなイメージだったんだけど……
そしてなぜか買い物終わりに帰り道を西城さんと歩いている。
「西城さん。家この辺りなの?」
「うん。あたしは西区」
「意外に近かったんだ」
「神坂は?」
「ああ。オレは北区」
「ふーん」
会話が続かない……オレや西城さんに共通の話題があるわけもなく沈黙が続く。気まずい。すると先に口を開いたのは西城さんだった。
「この前はゴメン」
「なにが」
「せっかく聖菜とデートしてたのに邪魔しちゃったよね」
「いやいいよ。正直オレも高宮さんと一緒にいれるか自信なかったから」
「じゃあなんでデートしたし」
「あれは高宮さんが一方的に……」
オレがそこまで言うと西城さんは立ち止まり少し考えこみ話し始める。
「やっぱり不思議。聖菜から誰かを誘うなんて」
「え?」
「聖菜はさ。中学の時から一緒だけど、人見知りだし引っ込み思案だし。今でもあたしや舞子くらいしか話す相手いないんだよ。それを自分から神坂を誘うなんて、しかも異性を」
そんなことを言われても困るのだが。でももしかしたら高宮さんが言っている『タイムリープ』が本当だとしたら、中身は38歳だからある程度、そういう部分での精神的なものは変わっているのだろう。
「だから心配になっちゃってさ。神坂がなんか弱みを握って無理矢理聖菜とデートしてるんじゃないかって」
あの時も今も弱みを握られてるのはオレのほうだけどな。でも西城さんは本当に高宮さんを心配してたんだな。意外に友達想いのいい人かもしれない。
「いやオレがそんなことするように見えるか?普通の男子高校生だよ?」
「普通が一番怖いじゃん。凶悪犯罪の犯人とか意外に普通の人だし」
「まぁ一理あるな」
「なにそれ?認めてんの?」
「もしかしたらオレの知らない隠された本能があるかもしれないしな」
「あはは。怖っ。神坂って意外に面白いね。イメージ変わったかも」
「オレもイメージ変わったよ西城さんの」
「あたしのイメージ?もしかしてビッチとか思ってる?」
「そこまでじゃないけど多少ね。男付き合い上手そうだし」
「あはは。正直だなぁ。あたしはまだ処女だし彼氏もいないよ。この外見のイメージでしょ?別に今どきのようにオシャレして可愛くしてるだけ。軽くもないしギャルでもないよ」
そう言って西城さんはオレの隣に並び歩き始める。そして再び沈黙が続きしばらく歩くとまた西城さんが話しかけてくる。
「あたしこっちだからさ」
「ああ。気を付けてな」
「うん。また明日学校でね。」
「おう」
「神坂」
「ん?」
「……聖菜のことお願いね。きっと聖菜にとって神坂は……運命的な何かなんだろうからさ」
「尽力はするよ」
そう言ってオレは西城さんと別れ帰宅する。
「運命的な何かか……それが将来の結婚相手ということなんだろうけどさ」
その帰り道。ふと空を見上げると大きな満月がオレを照らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます