12. マジでピンチまで5秒前

12. マジでピンチまで5秒前




 ついに迎えた放課後。オレと高宮さんは家に向かって歩いている。そしてオレはとてつもなく緊張していた。


 それはもちろん高宮さんが家に来るからだけど、それよりも何よりも女の子を家にあげるのは初めてなのだ。今までの人生の中で一番と言っていいほどにソワソワしている。電車の中でもほとんど話せなかったし。


「神坂君?」


「なんでしょうか!?」


「緊張しすぎだね。というよりお家こっちじゃない?」


「もしかしてオレの家の場所調査済みなの?」


「神坂君のご実家は何回も行ってるから分かるよ」


「個人情報が筒抜けなのか」


「ふふ。私には何でもお見通しなのだよ」


 そんないつも通りのやり取りをしていると不思議と緊張も薄れてきた。そしてとうとうオレの家が見えてくる。オレは鍵を開け、高宮さんを招き入れる。


「ただいま~」


「お邪魔します」


 しかし返事はない。どうやら怜奈はまだ帰ってないようだ。あいつ……約束したのに。


「……おやおや?もしかしてそう言う作戦ですか?妹ちゃんをだしに使うなんて策士だね神坂君?」


「いや違うって!本当に怜奈が……」


「とりあえず2階だよね?」


「何が?」


「神坂君のお部屋」


「客人をもてなすのは昔からリビングと決まっているから」


「でも今日私は神坂君の彼女として招かれてるんでしょ?普通初めてのお宅で、彼女はリビングにいないかな」


 なんか……高宮さんには勝てる気がしない。


「分かったよ。オレの部屋は階段上がってすぐ左の部屋だから先に行っててくれ」


「了解」


 高宮さんは笑顔を浮かべると、先にオレの部屋へと向かった。オレはとりあえずキッチンに向かい、飲み物の準備をする。お茶かコーヒーか紅茶か……う~ん。迷った末、無難にお茶を出すことにした。よし準備完了。オレは自室へと向かう。


「高宮さん。入るよ」


「はいはーい」


 ドアを開ける。その部屋の光景を見てオレは一瞬固まってしまった。高宮さんがオレのベッドで寝転がっていたからだ。しかもパンツが見えそうだし。


「ちょ!なにしてんの」


「神坂君の匂いを堪能してるんだけど」


「なるほど。そう言いつつも自分の匂いをマーキングしてるのか」


「そういう解釈もあるね。私は浮気とか許さないから」


「出た。時空探偵」


「ふふ。でも良かったね今日のオカズができて?私の匂いであんなことやこんなことを思い出してさ」


「消臭剤はどこだっけ」


「酷いなぁ~。神坂君は」


 まったく。本当にブレないな高宮さんは。とりあえず、怜奈がいないからやることもないので何か話題をふってみる。一応気になることだらけだからなこの高宮さんは。


「あのさ高宮さん」


「なにかな神坂君?」


「高宮さんは将来どうしてオレと結婚するんだ?本来なら25歳まではこうやって一緒に過ごすこともなかったわけだろ?」


「それは神坂君が猛烈にアプローチしてきてね」


「それは嘘だ。オレは高宮さんみたいな美少女……いや美人になるような人にアプローチできるほどの男ではない」


「よくご存じで」


 そりゃあ未来のオレですから。そして高宮さんはそのままオレを引っ張る。オレは覆い被さるような体勢になる。至近距離でオレを綺麗な瞳で見つめる。


 近い。それになんだか良い香りがする。シャンプーだろうか?しかも吐息が当たるくらいの距離だ。オレの顔は今真っ赤になっているだろう。ドキドキと心臓がうるさい。本当にこんな可愛い子がオレの奥様に……?


「顔赤いね?さてさて理性警察は本当に優秀なのかな?」


「今、人生最大の難事件に立ち向かってるな」


「ふふ。迷宮入りしちゃう?」


「それは困る」


 そんな時、玄関が開く音が聞こえる。怜奈が帰ってきた。オレはそのまま起き上がろうとするが、高宮さんがオレを離さない。


「高宮さん!?」


「今日は私彼女なんでしょ?」


「いや、そうじゃなくて!」


 絶対楽しんでるだろ。だって悪い笑顔だし。足音が段々近づいてくる。マジでピンチまで5秒前。

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