7. 初デートは突然に
7. 初デートは突然に
朝の日差しが差し込む。普通はあんなことがあれば眠れないとはよく聞くが、オレは寝不足やら疲れやらがあってそのまま眠ってしまったらしい。そして微睡みの中、目を覚ますとそこには黒髪の美少女がオレを見つめていた。
「おはよ神坂君」
「……またオレの顔見てたの?」
「うん。昨日の事思い出しながらさ」
そう言うと高宮さんはニコッと笑って見せる。昨日のこと?オレはその記憶を辿っていく。そう言えば高宮さんが突然……って思い返しているうちに恥ずかしさが込み上げてくる。
「顔赤いよ?」
「日差しが当たってたからな」
というより、さっきからオレの目線の先に高宮さんの胸元がチラついているのだが、見るなと言うほうが無理な話だ。
「こらこら。私の可愛い顔はそこにはないよ?」
「まだ寝ぼけてるんだよ」
「都合がいいね?というか手に柔らかい感触が残ってるんじゃない?」
「はい?そんな記憶はないんだけどな?」
「そう?無意識に触ってたかもね?」
「……本当に?」
「さぁ。どうかなぁ?」
高宮さんはクスクスと笑う。その顔がまた可愛い。もしそうだとしたらオレはなんてもったいないことをしたんだろう。とか両手を見ながら思ってしまう。
「ねぇ神坂君?」
「なに?」
「本当にいいの?まだ時間あるよ?シちゃう?」
「……今は遠慮しておくよ。オレは今一文無しだしさ」
「こらこら。売春じゃないから。でも神坂君ならタダでいいけど?」
「タダより怖いものはないからさ」
「人生損してるなぁ~。神坂君らしいけどさ」
そう言って起き上がり着ているバスローブを直す高宮さん。少し残念な気もするけど、さすがにその一線はそう軽々しく越えられるものじゃない。それにそんな勇気もない。
そのまま支度をしてラブホを後にする。駅に向かい、電車に乗り込んだ。
「う~ん……この時間は乗客が少ないね」
「今日は土曜日だし、まだ朝早いからな」
「あのさ神坂君。どうせ暇でしょ?」
「どうせが余計なんだけど」
「せっかくだから遊ばない?」
「……制服なんだけど?オレも高宮さんも」
「じゃあ洋服屋に行こうかな。神坂君の洋服コーディネートしてあげる!初デートね初デート!」
そう言って高宮さんは笑顔を見せる。やっぱり可愛いと思う。そのまま次の駅で降りて近くのショッピングモールへと向かう。
中に入り、適当に歩き回る。よく考えたらオレは今財布がないから高宮さんの言う通りに行動しないと家には帰れないんだよな。
そして着いた先は女性物の服を扱う店。まずは高宮さんが購入するみたいだ。そのまま店内に入る。高宮さんは慣れているのか、店員に声をかけ、そのまま試着室へと向かっていった。
数分後、高宮さんが着替えを終えてカーテンを開けた。ピンク色のワンピースに白いカーデガンを羽織った、とても春らしい格好だ。
「ど、どうかな?」
「似合ってるんじゃないか?」
「バスローブ姿とどっちが好き?」
「バスローブかな」
「即答ですか。ふふ。素直だねぇ神坂君は」
そのまま高宮さんはその洋服を購入し、そのあとはオレも服を買ってもらう。そして遅めのご飯を食べるために駅の近くのハンバーガーショップに向かう。
「あとでお金返すから」
「別にいいよ。どうせ将来神坂君が稼いだお金で私も好きなもの買うしさ」
「いや……高宮さん?」
すると高宮さんのスマホが鳴る。
「もしもし。あっ彩音ちゃん?うん、舞子ちゃんも一緒なんだ。私?私はね今、神坂君とデート中……」
は?待て待て!彩音ちゃん、舞子ちゃんって高宮さんのお友達の西城彩音さんと東雲舞子さんだよね?なんてこと言ってくれてんの!?オレは焦り始めるが、そんな様子を見ながら高宮さんは意地悪く可愛い顔で話を続ける。
「え?今は駅前のハンバーガーショップ。えっそうなの?うんわかった。はーい。じゃあね」
そして電話を切る高宮さん。なんか嫌な予感しかしないし、お決まりの展開とか起きるんじゃないか?
「……なんか2人共来るって?」
「じゃあオレは帰ろうかな。ここからなら5時間くらい歩けば家に着くし。オレは体力には自信あるから」
「すごい特技だね?でももう無理かな?」
そんなやり取りをしていると西城さんと東雲さんがすぐにやってくる。早すぎなんだが!?
「ありゃ。本当に一緒にいるじゃん」
「2人共早いね?」
「たまたまこの近くで彩音と待ち合わせしてたから」
冷たい視線が西城さんと東雲さんからオレに向けられる。そんな様子を高宮さんはクスクス笑いながら楽しんでいる。何とかしなければ……その前に高宮さん余計なこと言わないでくれよ。
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