蜂谷彩矢はニホンミツバチを絶賛する~秋・冬編~

ツーチ

秋の養蜂場

第8+3話 お姉さんのお花屋さん


 //SE 革靴の音



 「よいしょっ、お?」 /足音に気がついて顔を上げる



 「いらっしゃいま……あれ? どうしたの?」



 「え? この格好? ああ、いつもあたしは店ではこの格好だよ。まぁ、あたしの主な収入源はこっちだからね」



 「へへっ、どう? いつものあたしと違うこの格好は??」 /くるっと回転して全体を見せる 



 「あたしだってこういう女の子らしいエプロン姿もしたりするんだぞ? それよりどう? この後仕事が終わったら軽トラで山に帰るけど、用事がなかったらこのまま乗っていく?」



 「ん? 用事があってここに来たって? へぇ、キミも花に興味があったんだねぇ。ってかよくこの場所が分かったね!」



 「ほうほう、会社の人に聞いてこの花屋に来たと……」



 「へぇ、花を買いに来たのか……」 



 「入社してチューターだった先輩が転勤になるからその送別会が今日あるのか。で、その先輩にあげる花束を買いに来たと……」



 「……ってことはさぁ。もしかして今日結構遅くなる感じ??」



 「6時から送別会かぁ…………じゃあ、終わるまで待ってる……」



 「何時になるか分かんなくてもいいよ。……待ってるから」



 「う、うるさいなぁ!! 待ってるったら待ってるのぉ!! 別にいいでしょ!? それとも何、あたしに待っててもらったら何か困るのか!?」



 //SE 花を握りしめる音



 「……ま、まさかその先輩って……お、女なんじゃ…………」



 「な、なぁんだぁ♪ 男の先輩かぁ。あたしはてっきり……え、へへっ。な、何でもないよ~。そう言うことならあたしに任せなさい!! 先輩の送別にふさわしいいっぱいの花束を作ってあげるから!」



 //SE 花束をつくる音



 「……はいっ!! 出来たよ! これで先輩への花束はばっちりだぁ!! いやぁ、良かったな。あたしみたいなできる女が近くにいて♪」



 「あ、いいのいいの!! この花はあたしのおごりだから大丈夫さ。じゃあ今日は送別会が終わるまでずっと街で待機してるからな!」






 ♦ ♦ ♦






 //SE 革靴の音



 //SE 軽トラの扉を開けて閉める音



 「おかえりぃ……結構遅かったね。……もう10時だよ」



 //SE 軽トラの扉を走らせる音



 「送別会はどうだった? 先輩あたしの花束喜んでたか?」



 「ふふっ♪ そっか、それは良かった良かった。………………でもさぁ、もうちょっとなんかさぁ……早く帰って来てくれても良かったじゃん……。あたしずっと1人で車で待ってたんだからね?」



 「……まぁ、お世話になった先輩の送別会だから……しょうがないけどさぁ」



 「ん~~? 何? もうちょっと街側に住めばいいのにって?」



 「まぁ、街の中心に行くのは週1回の買いだしくらいで十分だし、野菜は隣のじいちゃん、ばあちゃんがくれるからなぁ。肉や魚は買うけどね」



 「キミはちゃんと自炊してるのか? キミが家にいない時にちゃんと栄養のあるものを食べてるかお姉さん心配だよ。まぁ1年目だし忙しいだろうから仕方ないけどね」



 「え、えへへっ。あたしの料理はおいしいか? ふふっ、そうかそうか。じゃあ今日も帰ったらおいしいご飯をたくさん作ってやろう」



 「え? もう食べたからそんなにお腹空いてないって? ダーーメ!! あたしまだご飯食べてないしちょっとは付き合ってよね? そうだ!! 帰ったら三次会しよ♪」



 「場所?? もちろんあたしのお家でだよ。うんうん♪ 今から帰るのが楽しみだよ。帰ったらお姉さん居酒屋開店しちゃうからな?」


 




 ♦ ♦ ♦






 「いらっしゃいませーー♪ こちら本日のお通しになりまーーす♪」



 「ん? 何って、冷ややっこと枝豆とポテトフライにすべて蜂蜜をかけたものですけど……」



 「おいしいのかって? ……お客様、当店では超一級品のニホンミツバチさんの蜂蜜を使った他の店にはないような斬新な料理を出しております。そんな超一級品の蜂蜜を使った料理がおいしくないはずはございません。というわけで、はいっ。あ~~ん!!」



 「どうですか? おいしいですよね? うんうん♪」



 //SE テーブルに料理を置く音



 「続いてこちらは鶏の唐揚げです。こちらも鶏肉を蜂蜜にたっぷり漬け込んでおりますのでとってもジューシーですよ? あ、お飲み物は何にいたしましょうか?」



 「……お客様、申し訳ございません。当店はビールというお酒を取り揃えておりません。……なので本日のおすすめはそちらのメニュー表に大きく記載してある蜂蜜酒ミードでございまぁす」



 //SE テーブルにグラスを2つ置く音



 「んしょ、っと!!」 



 //SE 隣に腰かける音

 //SE グラスに蜂蜜酒を注ぐ音



 「ん? なんで隣に座るのかって? まぁまぁいいじゃあございませんかぁ。で、最近どうなんですか? お仕事の方は?」



 「ふんふん、なるほど。それはすごい。いやぁ、お客様頑張っていらっしゃるんですねぇ」



 //SE 蜂蜜酒を飲む音



 「え? 居酒屋というよりもなんかキャバクラみたいだって? ……お、お、お客様……も、もしかしてもうそういうお店にいったご、ご、ごっ経験が?」 /震えた声で



 //SE 持ったグラスがテーブルで小刻みに震える音



 「なぁんだ、テレビで見たイメージですか!! もう~~、びっくりさせないでくださいよぉ♪ よ~~し、今日はあたしもたくさん飲んじゃうぞぉ♪」






 ♦ ♦ ♦






 「本日のお会計が、諸々もろもろ合わせて……え~~とっ……100万円です♪」



 「え? 払えない? ……それは困りましたねぇ。」



 「こうなったら身体で払ってもらうしかありませんね。……では来年の春まであたしの養蜂場を手伝うということで本日のお会計はチャラにいたしましょう!」



 「ふふっ♪ ということで来年の春までよろしくお願いしますね、お客様♪」


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