第8話 彼の正体と、誕生日



 凌馬君の友達なのかな……



 気にしながら見ていると、コメント欄でのやり取りで“ゆーせー” と呼ばれてる事に気付いた。


 ゆーせー?? え?? もしかして……彼?? 

 もしかしたらこの人は、私の初恋の人、天野 優星君??


 ふとそんな考えがよぎった。けど、優星君は小学生の時に遠くに引っ越したはず。だから、そんなはずはない。


 私が会いたいと思っているからそう思っただけかもしれない。

 

 それに、私の知っている優星君は小学生のまま止まってて、その姿と比べると、画面の中のこの人はあまりに大人っぽくて、同じ人かどうかなんて分からない。


 けれど、見れば見るほどこの人はかっこよくて、どんどん目を奪われていく。

 

 そうして見ているうちに、動画の中でのイタズラっぽく笑うその顔が……昔の記憶と重なった。


 もしかして、もしかして、もしかして‼ けれど、違うかもしれない‼



 どんどんドキドキし始める胸を抑えつつ、私は少し何かを期待して、その人にフォローを返した。




 すると、しばらくしてからまた、ポコンとスマホが鳴った。


 今度は動画サイトにメッセージが来たことを知らせる通知だった。


 メッセージが来るなんて……珍しいな。そう思いながら開いてみた。




――フォロバありがとう。実は小学校一緒だった、天野 優星です。覚えてるかな。凌馬から笹原のアカウントだって聞いて、懐かしくてフォローしてみたんだ。元気?



 メッセージをくれたのは、紛れもなく、初恋の彼からだった。



 うそ! ……信じられない。



 私は急いで返信した。



――久しぶり! うん! 覚えてるよ! 天野君こそ元気にしてた? 私は変わらず元気だよ。



――あーよかった。メッセージとか送って忘れられてたら、すげぇカッコ悪いなぁって思って。元気だよ。春に、地元に戻って来たんだ。



――え、そうなの? 高校は?



――東高校だよ。



――あ! もしかして凌馬君と一緒⁉︎



――そうそう、そうなんだよ。あいつ、昔と変わってないよなぁー!




……信じられない。久しぶりなのに、どんどん会話が弾む。



 それはまるで、離れていた時間がどんどん埋まって行くような感覚だった。



 そして私たちは何時間も、時間が立つのを忘れてやり取りをして、もうすぐ夜中の零時になろうかという時。




――あ、そう言えば今日、笹原の誕生日だったよな。誕生日、おめでとう!


 思いがけない言葉。


――え? 覚えてくれてたんだ?



――うん。だって、語呂がいいから。



――あ、そっか、“納豆の日” だもんね。




 メッセージを送りながら、彼からおめでとうを言ってもらえたから、誕生日が覚えやすい“納豆の日” でよかったなぁって思った。けど、彼からの返信は意外なものだった。

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