まずはお手持ちのJAXAを用意します。
恵介
第1話 宇宙より愛をこめて
こんにちは。今、ぼくは宇宙にいます。冗談や絵空事ではありません。
ここでは三食きちんと与えられます。物理的な拘束や、薬剤による過度な抑制もありません。起床時間はと消灯時間は決められていますが、不規則な生活は好ましくないのでこれは当然の規律です。
宇宙にいると時間の流れというものをよく考えます。ようは、暇なので。ただぼんやり座ったり、そのへんを歩いたりするぐらいで、することは特にありません。一日はこんなにも長いのに、気がつけば日付だけがするすると流れていきます。あっという間に翌月を迎えています。しかし今持て余す五分は、とてつもなく長いのです。
外出は許可がないと駄目です。ぼくは午前と午後にそれぞれ一時間の外出を許されています。
宇宙は夜です。いつも夜であることが当たり前なのです。太陽があってこそ、朝や昼というものが生まれ、地球が自転するからこそ夏や冬というものがあるのです。ここにはなにもありません。船内の気温や湿度はいつも一定に保たれています。明かりも同様です。
宇宙ではなかなか煙草が吸えませんが、これもこれで小説のネタになると思い、なんとか耐えています。いつか万全になったらぼくは小説を書こうと考えていますが、万全だったときでさえろくに書けなかったことは考えないようにしています。それが健全というものです。
それでは皆様、よい夜を。あなたが窓の外に目をやって、そのうちのひとつの小さな光が、もしかしたらぼくのいるところかも知れないと考えることも、案外有効かもしれないことだけは伝えておきましょう。
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