世紀末ダークフェミニスト
ユダカソ
世紀末ダークフェミニスト
「ガハハハ!犯せ犯せ〜〜〜い!!!」
「きゃーーっいやーーっ!」
トゲトゲのバイクに乗って砂丘を走る身体の大きなスキンヘッドの女達が容赦なく男子児童らに襲いかかった。
男子児童たちは着用していた布を破かれ、柔肌が顕わになり、見るも哀れな惨状が繰り広げられた。
事が終わると女達は男達の首をはねたり、好きに弄んだ。
誰も止める者はいない。
これがこの世の日常であったーーー。
時は世紀末。
国は歪んだフェミニズム(もはやフェミニズムではなかった)を掲げる過激な女性達ダークフェミニストによって支配され、酷い女尊男卑社会が長い間続いていた。
気候変動により鳥取砂丘は広がり続け、ついに国全体が砂丘と化し、もはや国は日本ではなく鳥取から転じて「トットリア」と呼ばれるようになった。
国を仕切る有力者達はかつてフェミニストと呼ばれていたが、度を過ぎる差別的行動により恐怖政治化、反対組織も生まれたが次々に制圧され、反抗した者はアキハバラゲートウェイという監獄に収容され、刺青を掘られるなどの拷問を受けた。
日本(トットリア)が砂丘化したことにより、過酷な環境に適応すべく女達は2m大の巨体に進化、ヒゲも生えるようになり、あらゆる毛が剛毛化した。
女達は自身の身体が男たちから解放された証として全裸を好んだ。
好んだというより強要した。
ブラジャーを着用した者は集団リンチに遭った。
そのため支えるものが無くなった乳房は重力により下へ下へと垂れ下がり、延べ棒で伸ばしたかのように平たい形となった。
もちろんパンツも着用禁止だったが、環境の変化により陰毛が増加、パンツを履いているかのように生えているため、陰部は丸出しにならずに済んでいた。
このような見た目になりたくない女ももちろんいた。
服を着たいし身だしなみも整えたい。
だが、それは有力者から「男に媚びている不良」と見なされ、着ているものは破かれ、ボコボコに殴られ、そしられ、社会的に孤立してしまうのだった。
男達はというと、「フェミニストを自称する歪んだ思想家集団ダークフェミニスト」が政権を握った時代から、性的に成熟した男子は「加害性を持つ危険な集団」として粛正された。
その時の惨状は見るに耐えない残酷な光景であった。
男たちは陰部を刈り取られてからアンアンメイデンに入れられ断末魔を上げながら死んでいったのだ。
刈り取られた陰部をトロフィーのようにトットリア会議事ホールの広間に並べ、頭蓋骨の盃に入れられた血のワイン(ただの血)を浴びるように飲む当時のダークフェミニスト先導者の写真は教科書にも載っている。
(もっとも教科書を扱うようなまともな教育はあまりされていなかったが………)
現在の男たちはアキハバラゲートウェイに収容され、「生まれながらにして加害性を持つ」として、奴隷以下の扱いを受けていた。
まずボコボコに殴りながら育て、自尊心を失わせ、自分にはまともに生きる価値は無いと思い込ませた。
この時点で死んだ者も沢山いた。
ある程度成長すると、女達の性具として扱われるようになる。
女達は品定めするように男たちを眺め、気に入った男で好きなだけ遊んだ。
殴るも蹴るもアリだった。
だが必ず“正常位”(この時代では女が上になるような体位を意味する)でなければならなかった。
また、男が悦ぶようなこともしてはならず、必ず精神的にも肉体的にも苦痛を与えねばならなかった。
女の中には男にも悦んでもらいたい者もおり、密かにそのような愉しみを持つ者もいた……だが、見つかれば最後、男は殺され、女は聖棒(性的玩具のような形をしているが、宗教的意味を持つ)により股間を塞がれ、7日間は排泄以外で抜いてはならぬという掟があった。
ちなみに女達は妊娠しないように進化していた。
そのため生理も無かった。
男達の精子もほとんど動かないように進化(退化?)していたため、妊娠は滅多に起こらなかった。
だが一部の健康な男子の遺伝子を持つ個体は代々飼育されていた。
彼らは妊娠用男子と呼ばれた。
妊娠用男子は妊娠用女子と性交をすることで人間達が絶えず生まれていた。
妊娠用女子はかつて有力者に刃向かった者達の子孫である。
「野蛮で原始的な特性を持つ者たち」として忌み嫌われていた。
出産は、女の場合はめでたいこととして喜ばれた。
国の保育機関に預けられ、牛乳で育てられた。
(人間の乳は野蛮であるとして使用されなかった)
男の場合は見向きもされなかった。
その場で殺されることもあったが、大体は捨てられた。
捨てられた子は、運が良ければ男たちによって拾われ、育てられていた。
妊娠用女子が男ばかり産むと、「男腹」として見下された。
あまり男が多いと殺された。
なので女を産むのに必死だった。こればかりは運だったが、様々な俗信やまじないをし、祈り続けてどうにか女を産んでいた。
男達は20歳を超えると殺された。
稀に気に入られた男は長生きすることもあったが、せいぜい30手前であった。
ついでにダークフェミニスト達は偶像崇拝を許さないので、あらゆる創作物は物理的に燃やされた。
ポスターも、彫像も、映画も、アニメも、漫画も、ゲームも、何もかもが物理的な炎に包まれていた。
こんなことは許されないとして、反抗する者や、逃げ出す者達で自治体を作る者たちももちろんいた。
だがそのような集落を政府は襲い、殺し、男は誘拐されたり犯されたりした。
もはやトットリア国土全てがフェミニストを自称する極悪集団ダークフェミニストに支配されたと、誰もが思っていた。
だが町田だけは違った。
かつて東京は政府により大虐殺が行われた。
都心は血の海と化し、若い男達は女達の性具としてアキハバラゲートウェイに連行された。
しかし「町田は東京ではない」と思っていたダークフェミニストの主導者は、町田だけは襲わなかったのだ。
現在、町田は「マチダニア」と呼ばれ、国が政府に支配される前の姿をした人間たちがひっそりと暮らしていた。
女達は好きな服を着て、男達も虐げられることもなく安全に暮らすことができ、生理が来たり、性交をすれば子供も産まれるような「原始的な」性質を持っていた。
中には反乱の機会を今か今かと探り続ける勇敢な若者も沢山おり、国から逃げてきた男達や、正義に目覚めた「現代的」な女達を匿い、支え合って生き延びていた。
その中の小さな村には一人、周りと様子の違う女が平和に暮らしていた。
彼女の名はデューン・サキュウウォーカー。
彼女は村の他の女達と違い、2m近くあり、髭も生え、陰毛も剛毛であった。
デューンは村で暮らす男たちに拾われ、育てられたのだ。
「パパ、どうして私は他のみんなと違うの?」
デューンは育ての親に尋ねるも、はぐらかされてばかりだった。
「他の女の子と違うなんてとんでもない。少し体が大きくて剛毛なだけだよ」
パパ達はみな優しく、デューンは愛されて育った。
次第にデューンも恋をするようになり、村の中で親しい幼馴染の男と結婚することとなった。
「もうすぐ結婚式だね」
2m大のデューンがその大きく長い腕で後ろから未来の夫を抱きしめた。
彼はウフフ、と笑いながら「デューンのひげが肌に刺さっちゃった」と、身体にまわされた腕に優しく触れた。
「ごめんごめん」
デューンはこの上無い幸福に包まれていた。
結婚式当日も、何も滞りなく式が行われた。
村は花で飾られ、人々は喜び、歌い、踊り、みな祝福に包まれていた。
それでは誓いのキスを………と、場を取り仕切る村長が口に出したその時
「襲撃だーーーーーー!!!!!逃げろーーーーーー!!!!」
声のする方を振り向くと、どでかいバイクに乗った巨体のスキンヘッドやモヒカンの女達が下品な笑みを浮かべながら村に向かってきていた。
「トットリア政府軍だーーーーー!!!!」
政府軍の女達は、マチダニアに生き残りの反乱軍(プロテスタント)の集落があると聞きつけ、村を襲いに来たのだ。
村の者達は怯え、逃げ惑い、混乱に包まれた。
デューンは夫を守りながら勇敢に戦った。
何が起きているのかわからなかったが、抵抗するしかなかった。
自分と彼女達が何故似ているのか、彼女達は何故我々を襲うのか、疑問を抱きながら……
だがデューンは敵の一撃が急所にヒットし、気絶してしまった。
しかしそのおかげで飾られていた花々が散り、その下に巨体が隠れ、それ以上の攻撃を喰らうことは無かった。
暫くして、デューンが頭痛とともに目を覚ますと、辺りは不気味な程に静かになっていた。
確か自分は結婚式を挙げていたはずだ、そして………
式は終わったのか?誓いのキスは済ませたのか?宴は終わりもうみな寝床に就いたのか?
そんなことを思いながら立ち上がると、なんと、辺り一面、死体と血の海となっていた。
デューンは事態が飲み込めなかった。
頭痛も酷く、これが夢なのか現実なのか、何もわからなかった。
さっきまで自分は幸福に包まれていたのに、村の人々は笑顔を絶やさず、元気に歌い、踊り、酒を飲み交わしながら自分達の結婚を祝福していたのに………。
そうだ、夫は………?
デューンは夫を探した。
名前を叫び、死体を掻き分けた。
物陰も探した。
だが頭痛と疲労で民家の壁に手を掛けたその時、一体の死体が目に入った。
見覚えのある身体つき、見覚えのある髪型、見覚えのある顔かたち………。
それは夫となるはずだった、愛する幼馴染だった。
幼馴染の服は無惨にも破かれ、陰部が露わになっていた。
しかしそこに陰部は無かった。
幼馴染の陰部は政府軍の女達に弄ばれた末に刈り取られ、ごみのように捨てられていた。
言葉にならない怒りと憎しみ、絶望と嘆きがデューンの体中から湧き上がり、嗚咽を漏らし、大声を上げながら泣いた。
雨が降り、血を洗い流しても、デューンの涙は止まらなかった。
ひとしきり泣いたあと、デューンは何もする気が起きず、死んでしまおうかと考えた。
体育座りしながら虚空を見つめるデューンの視界に、動くものが映った。
死体漁りだ。
「こいつぁひでえ………」
死体漁りの女は顔を歪めながらも、金品を目にすれば抜け目なく拾っていた。
「おっこいつは別嬪だな」と、デューンの幼馴染に近づこうとした時、
「触るな」
デューンは低い唸るような声です死体漁りに忠告した。
死体漁りは死体しか無いと思っていたため、素っ頓狂のような声を上げながら尻餅をついてしまった。
「いいいい生きてらしたんですかい奥方ぁ……!!!へへへ……言ってくれればいいのに………人が悪いなあ………」
死体漁りは慌てながらデューンに挨拶した。
「何しに来たんだ……この子悪党めが…………それともお前も政府軍の者なのか………?」
デューンが怒りと絶望に満ちた目で睨みながら死体漁りに尋ねると、彼女は慌てて否定した。
「ままままさか………!!!あっしは政府軍でもなんでもねえただの乞食でさあ………!!!食うものが無えから、こうして金品を拾って、その辺の集落で飯代と交換してもらってるだけですよ………!!!」
彼女はヒョロヒョロとしたヒゲを生やし、痩せていてなんとも頼りない見た目をしていた。
「この村のものはこの村のものだ……拾ったものを返せ……!」
デューンは死体漁りに怒りをぶつけた。
死体漁りは慌てた。
「そ、そんなこと言ったって、あっしだって必死に生きてるんだ。死体から奪って何が悪いってんです!もうみんな死んでるんだ!拾ったものは誰のものでもねえ!拾ったやつのもんだ!」
死体漁りは金品を守るように反論した。
デューンが大きく唸り声を上げたので、殴られるんじゃないかと、死体漁りは頭を守ろうとした。
しかしデューンはだらん、と体の力を抜き、
「そうだ……死んだんだ。みんなみんな……、死んだんだ………」とひとりごちて、静かに涙を流し、鼻をすすった。
「これからどうしていけばいいんだ………」
誰に言うでもなく、デューンは心の声をそのまま口に出した。
死体漁りはとりあえず殴られないで済むらしいことを確認し、「一体何が起きたんです?」と尋ねた。
「わからない……何もわからない………政府軍がやってきて………いきなり…………気づいたらこのありさまだ………どうしたらいいんだ…………」
デューンは手で顔を抑えながらそう告白した。
死体漁りは困りながらも「とりあえず、隣りの村にでも行きます?」と提案した。
だがデューンは「一人にしてくれ」と微動だにしなかったので、死体漁りはその場を後にした。
その後、何時間経ったか………大勢の人々が村の様子を見に来ていた。
死体漁りが隣の村に行き、金品を売ると同時に襲撃の話を持ち出したのだ。
そして噂が広まり、隣村の人々がこの村の有様を伺いに来たのだった。
死体漁りからデューンの話を聞いていた人々は、デューンを発見し、食べ物を分け与え、彼女を保護した。
襲われた村の死体は片付けられ、丁寧に埋葬された。
デューンは村の生き残りとして、何があったのかを隣村の人々に聞かれたが、何もわからないと言い、結婚式をする予定だったこと、突然叫び声を聞いたと思いきや政府軍に襲われ、気づいたらこうなっていたことを語った。
人々はデューンの話を聞き、青ざめ、デューンに同情して涙を流した。
そしてこの村も近いうちに襲われるのでは、と恐怖した。
「このままでは何も変わらない………。やはり今こそ立ち上がる時!」
マチダニアの若者達は一念発起し、ダークフェミニストの巣食うネオ・トーキョーの中心、カスミステーションに乗り込むことに決めた。
そうと決まれば訓練と荷造りだ。
村々は戦いに備えた。
悲しみに暮れていたデューンも、いつしかその感情は憎しみへと変わった。
そして「私も戦う」と、ダークフェミニスト達と戦うことを決意した。
「フェフェフェ………待ちなされ、お若いの」
そこへ怪しい老婆がやってきた。
「どれ見込みがある。だが今のままではお前さんに勝ち目は無い。わしが鍛えてやろう。」
「誰だお前は……」
見るも怪しく、髭も体毛も剛毛でない老婆をデューンは侮り、相手にしなかった。
しかし、
「おぬし、わしをみくびっておるな?どれ、目に物見せてやる」
と、怪しげな術を使ってデューンを浮かせたり、踊らせたり、自由自在に操った。
デューンは相手をみくびったことを謝り、術を解いてもらった。
「今のはどうやったのです?」
「フェースの力じゃ」
「フェース?」
「まあ、ついてこい」
ふたりはマチダニアから遠く遠く……エイトプリンス市内のマウンテン・タカオーに入って行った。
歩きながら老婆は語った。
名を女ーダ(ジョーダ)と言う。
「この世にはさまざまな力がある……。自然を司るアニミズム、創造と破壊を司るキュビズム、そして……」
ジョーダの指先が光る。
「平和と均衡を司る、フェミニズムじゃ。」
「フェミニズム……?」
デューンは首を傾げた。
「フェミニズムとは悪の力では?」
「それは違う。」
ジョーダは振り向いた。
「フェミニズムとは元々は我々と共にある偉大な力だったのじゃ。我々はフェミニズムによって導かれ、いつの世も平和を築き均衡を保ち、人道を外れないよう生きてきたのじゃ。それが……」
ジョーダは天を仰いだ。
「悪しき心を持つ者達の手に渡り、フェミニズムはダークフェミニスト達によってその清らかさを失い、今や破滅と暴虐の象徴となってしまったのじゃ…。もはやフェミニズムではない。」
「信じられない…」
デューンは顎に手を当てた。
「フェミニストは悪の使者と教えられてきました。そのため村を出てはならぬとも。村を出たが最後、フェミニストに捕まり、いたぶられ、殺されると教わりました。」
「フェミニストではない、ダークフェミニストじゃ」
ジョーダは口を挟んだ。
「……ダークフェミニストとは歪んだフェミニズムを信仰するカルト集団だとも……。」
ジョーダは笑った。
「あやつらも元は真っ当なフェミニズムを信じていたのじゃよ。」
再び歩き出すふたり。
「まあ、わしがそなたをあやつらとおなじくらい強く、そして暗黒面に落ちぬように鍛えてやるわい」
それからデューンのつらく厳しい修行が始まった。
マウンテン・タカオーを歩き回り、アニミズムを感じた。
タカオーの恵みに感謝しながら木を彫り、キュビズムを身につけた。
そして……
「フェースじゃ」
ジョーダは浮きながら語った。
「フェミニズムの源、フェースの力は、目には見えぬが常に我々とと共にあるのじゃ。」
デューンは一ミリも浮かない。
「何か心に暗黒面があるな。それを克服するんじゃ。」
不安、恐れ、悲しみ、怒り、絶望………そして憎しみがデューンの心を支配していた。
「暗黒面に支配されるな。逆に支配してやるんじゃ。」
デューンは次第に浮くようになり……、ついに3メートル浮くようになった。
「よくやった。これでもうおぬしに教えることはない。」
「恐れ入ります。」
デューンは深々と頭を下げた。
「じゃが……暗黒面には気をつけるんじゃぞ。お前の本当の母は……おや、もう時間が無いようじゃ。」
フェースと共にあらんことを、と言いながらジョーダは消えた。
デューンはマウンテン・タカオーを降り、山から流れる水がトネ・リバーと合流することに思いを馳せながらマチダニアに帰ってきた。
そしていざ、カスミステーションに仲間たちと潜入する時が来た。
カスミステーションでは、ダークフェミニストの元帥たちがマチダニアの動向を伺っていた。
「反乱軍に動きが」
「たわいもない。捻り潰すまでよ。」
その中でも最も強いダース・フェミダーがフッと笑った。
デューン率いる反乱軍はカスミステーションに潜入、光の剣(ペンライト)を駆使してダークフェミニスト達を倒し、デューンはフェースを使って飛んだりしながら相手を圧倒した。
ダークフェミニスト達は単なるチンピラ集団。
一度劣勢になると散り散りになり、カスミステーションは反乱軍によってあっけなく制圧されてしまった。
デューンは悪玉に打ち勝つ、と一人カスミステーションの中心、トットリア会議事ホールへと乗り込んだ。
そしてついに悪の総帥、ダース・フェミダーと対峙。
「よくここまできたな………若造よ。」
ダースフェミダーはペストマスクを被り、黒い甲冑に包まれた怪しい風貌をしていた。
そして赤いクソデカペンライト(光の剣)を握っていた。
「お前を………殺す!」
デューンは憎しみで力一杯闘った。
相手も強く、またとない良い勝負であり、デューンは内心楽しさに震えていた。
「なかなかやるな……。殺すには惜しい女だ。」
ペンライトを交えながらダース・フェミダーは語りかけた。
「お前に真実を教えてやろう」
「真実?」
デューンとダース・フェミダーは一歩下がった。
「お前の母の話を聞いたことはないか?」
「そんな者はいない」
デューンは相手が何を伝えたいのかわからず、苛立った。
「私の親は父と父、そして父と父だ!女なんかいない。」
「それは違う」
ダース・フェミダーは笑った。
「お前の本当の母親は………私だ。」
デューンの体に衝撃が走った。
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
デューンはその言葉を打ち消そうと、全力でダース・フェミダーに打ち込んだ。
そして脳内では点と点が結びつくのを止められなかった。
何故自分だけが村の中でこんなに剛毛なのか…。
何故自分にフェースの才能があったのか……。
あの時ジョーダが言おうとしていたことは……。
「母子ふたりでこの世界を支配しよう、娘よ」
ダース・フェミダーの誘惑に、余計こころの中が混乱するデューン。
しかしデューンの方が若く、僅差でデューンが押し勝った。
ダース・フェミダーにとどめを刺そうとするも、心の迷いから振り切ることができない。
その時
「ほっほっほ。見事な戦いでした。」
真の黒幕、フェミーザが現れた。
「デューン、あなたには素晴らしい力がある。是非我々と手を組んで世界を支配するべきです。ダース・フェミダーよりいい地位を与えましょう。」
フェミーザはダース・フェミダーに嘲笑うような視線を投げつけた。
「あのダース・フェミダーはもう用済みです。」
フェミーザに見限られ、ダース・フェミダーは目が醒めたようなショックを受けた。
だが全力を尽くした死闘の後だったので、体がうまく動かせない。
フェミーザの登場に動揺するデューン。
「私がそんなものを欲しがると思うか!」
ニヤリと笑うフェミーザ。
「そうでなくとも、そうしてあげます!」
そしてフェースの力でデューンを押さえつけた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
フェミーザは暗黒面の心を吸い取って自身の力とする凶悪な敵だった。
デューンの心に渦巻く憎しみが、暗黒面がフェミーザに力を与え、デューンのフェースの力を圧倒的に上回ってしまったのだ。
「仲間になると言いなさい。さもなくば死ぬことになりますよ!」
フェミーザはデューンに迫った。
ダース・フェミダーは体力を使い果たしていたが、目の前で血の繋がった娘が殺されかけていること、そして自身を呆気なく捨てようとしたフェミーザへの不信から、思わぬ行動にでた。
「ぐわーっ!!何をするのです!!!」
ダース・フェミダーはフェミーザを押さえつけ、デューンを助けたのだ。
「裏切るのですか!?この私を!!」
「先に裏切ったのはそっちだろう!この悪党め!!」
そしてトットリア会議事ホールからフェミーザを投げ捨て、フェミーザはあっけなく落下死。
黒幕は消えた。
「母さん!!!」
デューンは実の母親に駆けつけた。
「母さん!!私の母さん!!どうして……」
ダース・フェミダーはペストマスクから息絶え絶えの吐息を漏らしながら語った。
「ふふ……。自分でも………わからない………。ただ………お前を見ていたら………思い出したんだ………あの頃を………」
「母さん!無理に喋らないで……」
デューンは母親を楽な姿勢にしようと支えた。
「し……真の……正しく………優しい………フェミニストに………憧れていた………若かった自分の……あの頃を…………!」
ここまで語り、「ごバァ!!!!!!」と血を吐いて絶命した。
「母さーーーーーーーーん!!!!!!」
デューンは泣いた。
己を暗黒面の力から救った我が母のことを思いながら……。
そして、ようやく復讐は果たされ、全てが終わったのだという解放に包まれながら………。
その後、ダークフェミニストは改宗し、ダークフェミニストはいなくなった。
アキハバラゲートウェイから男達も解放され、みな泣いて喜んだ。
女たちは好きな格好を楽しめることを喜び、脱毛をした。
もう誰も虐げられない、誰も圧迫されない平和な世界を築き上げようと、みなが誓った。
フェミニズムは平和と均衡を取り戻し、再び聖なる三イズム(トライフェース)の座へと還っていった。
そしてデューンは真のフェミニストとして、国を導き、平和へと誘う指導者となったのだった…。
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