第98話ここを新たな拠点としよう。
静まり返る仲間達。一時皆口を閉じていた。頭では分かっていた。この重い空気を変えなければならない事を。だが、それを変えるのも重苦い物だった。それでもその空気を変えようとしたのが朝陽だった。
「ありがとうございます。話してくれて、今度は僕達の番だ。僕達は君達程では無いが災害に遭ったんだ。僕達は学校の二階に居たのだけれど、一階には濁流が傾れ込んで来たんだ。それを二階から眺めていた僕らは生きた心地がしなかったんだ。屋根が有っただけマシだったけど、窓ガラスは皆んな割られてしまって雨水が吹き込んで来たよ。その為、床はびちゃびちゃだった。音も揺れも本当に怖かったんだ」
朝陽はその時の事を話してくれた。
「僕はそんな怖い時でもトイレに何度でも行きたくなったんだ。けど、トイレに行くと怒られるから、携帯トイレ使うのが嫌だった事を覚えているなー」
と、将磨君も教えてくれた。
「僕は食べたくて食べたくて仕方なかったかな。あんなに寒い所だからさ、温かい物を食べたかったんだ。あの時は食うもんの事しか考えて無かったかな!」
次は陽斗が話してくれた。
「俺は帰りたい事しか考えられなかったなぁ。家族の安否が分からないからさ。心配で心配で仕方無かったのを覚えているなー。勿論君達の方が心配だったろうけどねー」
壱平も状況を話してくれた。
「最後は私ね。あの時は泣きたくなったわ。悲鳴上げる女の子も居たし、男の子達だって口々に弱音吐いてたわよ。いつも威張っている様な子だってね。ああ言う時は弱音を吐くものよ。私は怖くて寒さとで友達と震えてたわ」
陽奈ちゃんも最後は怖かった事を教えてくれた。
「私達は多かれ少なかれ、怖い事を経験した者同士ね。これからは皆んなで協力して行きましょう。仲良くしましょうね」
陽奈ちゃんは最後の言葉にピッタリの言葉をまとめてくれた。
「「「うん」」」
皆んな、その言葉に元気良く返事をした。新葉はこれからの行く末このメンバーが出来て、友達が出来て良かったと思った。
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