第5話渚ちゃん。僕の手に掴まるんだ。
早葉の後ろを歩くのは新葉だった。その後ろに渚・大地が後ろを追う形で歩いて上がった。後ろからゴーゴー音を立てて、どんどん泥水が上がって来た。
「ゴー。ゴー。ドドドドドド。バッシャーン。ザバーン。ズドドーン。ゴゴゴゴゴーンゴゴゴゴゴゴォオ」
「きゃー」
その勢いの速さに渚が足を取られてしまう。
「渚ちゃーん」
倒れた事で新葉と渚の間を結んであった紐が解けてしまい、結び目が解けた事で二人が離れてしまった。後ろで結ばれて居た大地も転倒してしまう。二人は濁流の中へ足を引き込まれてしまった。
「渚ちゃん。僕の手に掴まるんだ。手をー」
新葉は急いで手を伸ばし、渚の手を掴むが自分の方へ引き寄せる事が出来ない。
「渚ちゃん。僕の言った通りに縛るんだ。この縛り方は絶対に解け無い縛り方だ。自衛隊のお兄さんに教えてもらった縛り方だ。紐を……………………」
新葉の手が痺れて来た。顔に水飛沫が飛んでくる。完全に濁流に浸かってしまっている二人は勢い。重さ。速さが新葉の救出を阻む。ギリギリだった。限界だった。手はぱんぱんだった。千切れそうに痛かった。自分の方へと引き寄せようとするが、無理だった。無力にもそれ以上の事は出来なかった。
(誰か助けて、渚ちゃんと大地くんを助けて!)
新葉の横を長い手が伸びて来た。二人を引っ張り上げたのは先生だった。階段の上まで上がり切ると勢い良く濁流は階段の可成り上まで上がって来た。危機一髪で脱出した子供達は屋上の扉を開き屋上に出た。
風が勢い良く吹いていた。生徒達、先生方が壁に凭れ掛かって風を避けていた。
「お前達大丈夫だったか。怪我は無いか?」
先生方が声を掛けて来る。
「皆んなー。良かった〜」
生徒達も騒ぐ。難を逃れた生徒達に容赦なく強風が襲う。強風で足を掬われる。押される体が吹き飛ばされそうになる。ボードが持って行かれ手から離れそうになる。咄嗟にボードを倒し、その上に乗る子供達。二台のボードが子供達を乗せたまま引き摺られ、壁に激突する。子供達は強風を受けながらそれに耐えて居た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます