第4話流されて行くボード。
早葉は力強く先生の手を握って居た。先生はその手をあくまでも振り払おうとしていた。子供達に取ってとても危険な行為だからだ。
「ウオォぉぉぉ」
早葉は叫び、力の限り引き上げようとした。早葉の手は痺れて来た。もう限界を意味していた。 早葉の手から、いつ離れてもおかしく無い程力が出無い。力が抜けて行ったのだ。もはや、救いたいと言う思い、気力だけがそこにあった。
「 早葉。任せろ。オレが手伝う」
言ってもう一つのボード山田大翔と伊藤颯太が先生の体と足を掴んだ。波の様に動くボード。 早葉の手から遂に先生の手が離れて仕舞う。早葉達の乗っていたボードが濁流によって流されて仕舞う。後を追う様に大翔達の乗ったボードも流されて行く。
しっかりと掴まえていた大翔達のお陰で先生はボードに乗る事が出来た。
しかし、その直後。左右に激しく揺れるボードから子供達は濁流へと放り投げられて仕舞う。今度は先生が紐をしっかりと握り、濁流の中、ボードの上に一人一人上げて行く。流されて行くボード。ボードは階段の方へと向かって行った。水飛沫の中、階段へと押し出されて来た早葉は手摺りに掴まった。
反対側の手すりに掴まった先生はボードと子供達を一気に引き上げ、階段の上へと乗せて行く。
「上に登るんだ」
先生は言った。子供達は紐を付けたまま階段に上がって行った。次に先生は 早葉の手とボードを握って引き寄せた。
「早く、二人共こっちに飛び乗るんだ」
言って、紐を付けていない紗英と絵里香に向かって言った。恐がる紗英と絵里香だったが、思い切って階段の上へと飛び乗った。
先生は 早葉達一人一人を階段の上に上げて行った。ボードも引き上げられ、全ての子供達が階段の上に上がった。上に上がって行く子供達だったが 早葉はもうくたくたに疲れていた。一人で立っているのも難しい状況だった 早葉は結愛と陽菜の肩に凭れながら階段を上がって行く。先に上がる悠真はボードを引き摺って上がっていた。ボードはガタガタと音を立てて上がって行った。
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