第68話 飛鳥さんの暴露
俺は、用事も終わったので帰ろうとするが、そこで、天上院飛鳥に止められ、手には何か紙を持っており、旦那である天上院玄羅がとても焦っている。
「あの~飛鳥さん?それは一体なんですか?」
「ああっ、これですか?これは、あの人の探索者の合格通知通知証ですよ!
「「「「「「「エエエエエッーー」」」」」」」
飛鳥が、玄羅に向かって指を指しながら爆弾発言をする。
「父さん。本当に?」
「爺さん、マジかよ?」
「「「……………。」」」
それぞれが、驚愕したようである。
「本当だ。…………というか、何故、飛鳥が知っている?」
「あらっ、私を誰だと思っているんですか?あなたの妻ですよ。あなたは元々自分の力を試してみたいとずっと思っていたのでしょう?それに、ダンジョンが出現してからは妙にソワソワし始めるし、探索者試験の前日に旅行に行くんだもの。とても分かりやすかったわ!」
「爺さん!全部バレてたんだな!」
「今は、息子夫婦と孫が来ているからダンジョンに行けなくてイライラしていたんでしょ?」
「確かに!孫に会えるのは嬉しいが、今回ばかりは早く東京に帰らないかと思ってた。すまんな!」
「「「「「「…………。」」」」」」
全員が驚愕というか呆れてものが言えないようである。
「それで、俺に何の用があるんですか?」
「出来れば、主人と一緒にダンジョンに行っては貰えませんか?」
「「えっ?!」」
「是非、お願いしたいんですけど!」
「マジですか?」
「ええ、マジです!」
「飛鳥、儂は別に…。」
「あなたは黙ってなさい。」
「わかりました!」
「それで、どうでしょうか?」
「はぁ~、拒否権はなさそうですね。わかりました。いいですよ。」
「神月さんならそう言ってくれると思ってましたよ。あなた、良かったですね。」
「そうだな!神月、よろしくたのむ。」
「わかりました!では、明後日の朝に朔夜達と一緒に来てください。」
「明日ではないのか?」
「明日は休む予定なんですよ。」
「むぅ、それは仕方ないの!」
「では、この辺で失礼したいんだけどいいですか?」
「神月さん。御止めして申し訳ありませんでした。出来たらまたいらしてくれると嬉しいですわ。」
「機会がありましたら、では!」
「朔夜、玄関まで送って差し上げて!」
「じゃあ、行こうか?」
「はい。」
「ワン!」
俺は哮天犬と朔夜と一緒に玄関に行く。すると、車が止まっており藤川さんが待っていた。促されるまま車に乗り込みダンジョンまで送ってもらい。その後、自室に戻り自分の車で家に帰る。帰ってからはいつも通りに過ごす。翌日の日曜日も同様にダラダラして過ごす。
そう言えば明日、爺さんはどんな武器を持ってくるんだろう?朔夜と遙は、まだ、何処をやるのか決まってないから武器はまだいいとしてもあの爺さんの事だからバリバリの前衛だと思うんだよな。恐らく、刀でも持ってくるだろう。でも、しかも下手したら有名な刀かもしれない。そんな物を使わせるのは、日本人として許せるものではない。それに、俺には鍛冶のスキルがあるし、ちょうどミスリルを持っている。なので、作ってみることにする。アイテムボックスからミスリルのインゴットを取り出し早速作成していこうと思う。取りあえず魔力を通して刀の形に成形すると思いの外簡単に作ることが出来た。鍛冶のスキルを使えば簡単に出来るものである。あとは、鞘をトレントの木材で作るが鍔と刀の柄の構造を知らないため、明日の朝イチに支部の武器屋にでも顔を出すとしよう。
そして、今日は4月5日。待ち合わせは9時だが、俺は1時間早くダンジョン支部に到着する。目的は、解禁日当日に行った武器屋である。俺が店に入ると、
「おっ、いらっしゃい!今日は、どうした?」
「どうも!実は、2つ程頼みがあって来たんだけどいいか?」
「おう、いいぞ!但し、内容にもよるけどな。」
「まず、1つ目は、帯刀ベルトの事なんだけど!」
「おう、何か具合が悪かったか?」
「いや、使い心地は特に問題ないんだが、諸事情があってもう1本刀を使うことになったんだよ。それで、刀を2本差せる帯刀ベルトを売って欲しいんだよ!」
「何だ!そんなことか。それなら、在庫があるから大丈夫だぞ!それで、もう1つは何だ?」
「もう1つは、他言無用で頼みたいんだが?」
「その辺は大丈夫だ。俺たちにも守秘義務があるから他言はしない!」
「そうか。じゃあ、この刀に鍔と柄をつけてくれないか?」
俺は、昨日作ったミスリルの刀を武器屋の主人に渡す。すると、主人は、刀の柄の部分を布でくるみ、刀を抜く。すると、
「はっ???」
と、変な声を出して固まってしまった。
「おいっ、大丈夫か?」
俺は、主人に問いかけると、急に動きだし、刀をカウンターの上に置き、俺の肩を両手で捕まえる。
「お前、あれどうしたんだよ?あんな立派な刀、今まで見たことが無いぞ?」
「えっーと、企業秘密で!」
「そうか。じゃあ、1つだけ聞かせろ!あれは、汚い手段で手に入れたものじゃないな?」
「それは、大丈夫です!」
「そうか。わかった!………鍔と柄をつけるから暫く待ってろ!!その間の店番も頼むぞ!」
汚い手段って、盗んだり、人を騙して取ったり、借金のカタとして、入手したって事だよな。あれは、俺が自作したものだからそれは無いが、国にダンジョンを報告していないと言うことは汚い手段に入るのかな?まぁ、正直微妙なことだから気にしないようにしようと思う。待っている間、店番を任されたが、何人か客が来店し、武器を買っていった。特に、値引き等はされずに済んだのは幸いだった。俺には、値引きなんて出来ないからな。だって、俺の店じゃなから、そんな権限もないからな。
20分位で完成したらしい。見事に完成している。
「それと、これだ!」
カウンターの上には刀が2本差せる帯刀ベルトを置く。
「いや~、いい仕事させてもらったぞ。ありがとな。」
「そんな感謝されてもな。取りあえず助かったよ。ありがと、おっさん。」
「そう言えば、まだ名乗ってなかったな。俺は、ここの店主の御蔵武彦だ。よろしくな。」
「俺は、神月サイガ。よろしく。」
「さて、それじゃあ会計だが、5万になるぞ!」
「わかった。じゃあ、探索者カードから引いてくれ。」
俺は、探索者カードを御蔵に手渡し、会計を済ませる。御蔵は、手際よく会計を終わらせて、カードを返却してくれる。
「毎度あり。また、頼むな!」
「また、何かあったら寄らせてもらうよ!じゃあ、また来る!」
「ありがとな!待ってるぜ!」
俺は店を出る。
時間は8時40分である。まだ、待ち合わせには少し早いので、少しブラブラしようとした時、
「あっ、師匠っす!もう来てたんっすね!」
遙が俺を見つけて手を振りながら駆け寄ってくる。後ろには朔夜の姿もあるが、俺は、その後ろには居る人物を見てフリーズしてしまった。だって、そこには戦国武将みたいに鎧を着こんでいる人物が居たからである。真っ赤な鎧に刀を携えている。遙と朔夜が俺のすぐそばまで来るが、俺が再起動しないのを見て、遙が俺の目の前で手を振りながら、
「師匠、大丈夫っすか?」
「はっ、えっーと、大丈夫だけど、あれは一体何だ?」
俺は、赤い鎧を着た人物を指差して、遙と朔夜に質問をする。すると、朔夜が恥ずかしそうに、
「あれはですね、お爺様です!」
「まぁ、何となくそんな気はしてたんだけど、何で鎧??」
「私もそれを聞いたんですけど、今から戦いに行くのだからこの格好が相応しいって言って聞かないんですよ。私も危うく着せられそうになりましたけど、それを回避するのがやっとでした。」
朔夜が申し訳なさそうに言う。
「まぁ、仕方ないか。それで、爺さんの登録はもう済んだのか?」
「はい。さっき終わりました。」
「じゃあ、さっさと行こうか!あんなに目立ちたくないしな。」
「師匠が、それを言うっすか?ワンちゃん連れてるだけで十分目立ってるっす!!」
「ワン!!」
哮天犬は、遙の意見に賛成のようだ。
「それもそうだな。これ以上、騒がれる前に行こうか!」
「はい!」
「はいっす!」
「おーい!爺さん!ダンジョンに行くぞ!!」
「おおおっ、そうか!楽しみじゃの!では、さっさと行くぞ!」
俺達は、ダンジョンに入る。
「それで、これからどうするのじゃ?」
「まず、爺さんに話しておきたいことがある。」
「何じゃ?」
「これから起こることは秘密にしてもらいますよ!」
「うむ。了解だ。」
「では、行きますので付いてきてください。」
そう言うわけで人が、転移をするために人気の無い方に進んでいく。
「おい、こっちじゃないだろ?地図によるとあっちだぞ!」
「爺さん、何で知ってるんだ?」
「いやな、さっき、地図を売っていてな。買ってみたんだ。」
「2階層に行くわけじゃないから、こっちでいいんだよ!」
「そうか。」
そして、俺達は道を外れ人気の無いところに到着する。
「おい、神月。行き止まりだぞ!」
「そうだな。」
「そうだなって、儂はダンジョンを探索しに来てるんだぞ!」
「お爺様。五月蝿いですよ!」
「朔夜!!」
「そうっす!今から凄いことが起こるっす!」
「何っ?」
「じゃあ、行くぞ!」
俺は、転移の指輪を使い、このダンジョンの俺が辿り着いている最下層の8階層に転移する。
「おいっ、どうなっている?ここは何処だ?」
「まず、ここは8階層で、俺が持っているアイテムの転移の指輪を使ってここまで来た。」
「本当か?」
「ええっ、本当よ。お爺様!」
「すっ、凄いな!!」
玄羅は、ビックリしているようである。まぁ、普通の人が見たら驚くよな。
「そうそう、爺さん!いちおう聞くけど、どうやって戦うスタイルなんだ?」
「それは勿論、この刀を使って斬りまくるんじゃよ!!」
「ってことは、バリバリの前衛ってことか!」
「そうなるの!」
「それで、その刀って名前とかあるのか?」
「これは、正宗だ。」
「やっぱりか!!」
「お爺様。そんなもの持ち出しておとうさんに怒られますよ!!」
「黙ってれば分かりはせん!……………多分!」
「師匠、あの正宗って刀はそんなに凄いんすか?」
「ああ、片名としては有名だよ。値段にしても1000万円位はするんじゃないか。」
「マジっすか?そんな物を使うとか信じらないっす!」
「まぁ、そうだな。………爺さん、俺もそれを使うのはちょっと感心しない。何たってそんな名刀もう作れないからな。それは、芸術品として後世に残しておくべきだと思うぞ!」
「そうは言うてもな、正宗を使わなければ使う武器が無いぞ!」
「そう思って、武器は俺が用意してみた。これを使ってみてくれよ。」
俺は手に持っている昨日作成したミスリルの刀を玄羅に手渡す。
「これは?」
「俺のスキルで作った刀だ!」
「いいな、お爺様。」
「羨ましいっす!」
玄羅は、刀を抜くと、
「おいっ、本当にこの刀もらってもいいのか?」
「いいぞ!」
「いいぞって簡単に言うけどな、これは、正宗にも引けを取らない名刀だぞ!」
「名刀って言っても作者は俺だし、そんな評価してくれる奴なんていないから使ってくれ。ほら、そこの岩で試し斬りしてみたらどうだ?」
「馬鹿を言うな!あんな岩で試し斬りなんかしたら刃が欠けるか下手したら折れるぞ。」
「いいから、折れたら折れた時だし、多分大丈夫だと思うからやってみ!」
「どうなっても知らんぞ!」
玄羅はそう言いミスリルの刀を構えて岩に向かって刀を振り下ろす。すると、刀が弾かれる音はせず、玄羅は残心を行っていた。
「はっ?」
すっとんきょうな声を玄羅が出すと、岩が真っ二つになっている。
「凄いっす!」
「凄い!」
すると、玄羅が俺の元に歩いてきて、俺の両肩を掴む。
「おいっ、どう言うことだ?殆ど手応えが全く無いし、何で刃こぼれ1つ無いんだ?」
「えっと、多分ミスリルで出来てるからだと思う。」
「それで、片付けていいのか?」
「仕方ないだろ!それしか言いようが無いんだから!あっ、それと、朔夜と遙にも今日は武器を使ってもらおうと思う。」
「マジっすか?」
「いいんですか?」
2人はとても嬉しそうにこちらを見ている。
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