生徒と先生 選手と監督
小さい作家です。
第1話 入学
2019年4月、僕は慣れないブレザーを身にまとい慣れない道を進んでいた。今日は、高校の入学式だ。人見知りの自分からすると知らない集団に放り投げられた気分だった。
前日、家に1つの電話が入った。僕が入学する高校からだった。
「もしもし、甲信高校教師の安田です。入学式の前日にも関わらず申し訳ありませんが、明日の新入生代表挨拶をお願いしたくお電話させていただきました。」
声に嫌な癖がある関西弁風な口調の男の先生だった。
「わかりました。考えてきます。」
人のお願いにはとことん断れない性格はおそらく父親ゆずりだ。
それにしても、特に頭がいいというわけでもない自分が選ばれたのは不思議だったし、前日に頼んでくる学校側にも腹が立った。
当日、司会者の新入生代表挨拶のアナウンスでステージ上に上がる。人前であいさつなどこれまでの人生で経験したことがなかったこともあり不安と緊張で胸がいっぱいだった。
案の定、前日に叩き込んで覚えてきた言葉がスピーチ中に飛んでしまい沈黙の1分間を生んでしまった。高校の入学式で最悪なスタートをきってしまった。逆に、インパクトを残し面白がられる可能性もあるかもしれないと考えてしまった。そんな考えもおそらく父親ゆずりだ。
入学式では、クラス担任の発表もかねて行われると聞いた。僕は1年2組。
担任は、「安田」と発表された。
生徒と先生 選手と監督 小さい作家です。 @chiisaisakka
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