第一章 最弱モンスターになっちゃった

第1話 悟りんぐ

 ダンジョンが出てきて35年。わたしが生まれて17年。今やダンジョンを潜る人を職にした探索者と、それを配信してるダンジョン配信者がなりたい職業の2強となってる今日この頃。わたしは今、意味がわからない状況にある。それは——————


(何がどうしてこうなったぁぁぁ〜!?!)


 寝て起きたらモンスターになってダンジョンにいた!

 本当にそのままの意味で、何があったとかでもなく眠りから覚めたらスライムっぽいモンスターになってた。何を言ってるかわからないと思うけど、わたしも何が起きたのかわからない!

 とりあえず、落ち着こう。冷静になろう。異常事態が起きた時に、その状況がやばければやばいほど冷静にならなきゃいけないって聞いたことがある。だから落ち着こう。


(ふぅーー………、よし落ち着いた)


 まずは現状把握だ。て言ってもさっき言ったこと以外何もないけど。とりあえずステータスを見よう。


—ステータス——————————————

名前 なし

種族 不形定まらぬカタチ

レベル 1

技術 《変形カタチツクリ

————————————————————


 あっはー。

 名前ないそうです。わたし名前……あれ?名前なんだっけ?歳も顔も体も、両親も何もかも覚えてるけど、名前だけ濃い霧が掛かってるみたいに出てこない。名前に関する事が全部抜け落ちてる。


(え、怖っ…寂し…悲しい…)


 いつか思い出せるかな?


 とりあえず、感情に浸るのは先送ろう。今は前見なきゃね。足元も後ろも見る暇なんてない。ここはダンジョン。わたしはモンスター。弱肉強食なんだ。ジャングルよりもね。


(進もう)




 ここは洞窟型のダンジョン。スタンダードな型だ。それに、わたしの種族の不形定まらぬカタチがいるって事は中層に近い上層なんだろう。

 ダンジョンの、どっちが上で下かわからない状態で進んでいくと、ちょっとした広間のようなところに出た。……ゴブリンだ。3匹いる。


(見敵必殺先手必勝!………て言ってもどう攻撃しよう)


 わたしの種族は力がない。それはもう驚くぐらい無い。頑張ればもしかしたら怪我を負わせることくらいはできるだろうけど、生物を殺める力は無い。最弱のモンスターなんだ。


(………あれ?勝てなくね?)


 え????むり????

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る