第12話
内臓を突くような低い音が響いて、静寂が横たわる。
でもそれは一瞬だった。すぐに、先程から何度かループ再生されている、若い女性が新商品の紹介をする店内放送がまた冒頭に戻って鳴り始めて、店員がそれをきっかけに我に返ったように何やら呟くと、慌てて店外へ駆け出した。
駆け出した店員がすぐに放った「大丈夫ですか!?」の声が、それは緩慢にだが現状へ現実感を与えてくれる。
忘れていた呼吸のやり方を思い出した。長い潜水を終えたように大きく息を吸って、胸の苦しみから解放されようと肩を上下させながら空気を貪る。
店内では他の客もおろおろとしていて、誰しも外を見たまま動けなくなっていた。引き寄せられるように外を見る。
店の前に横たわる道で、信号を無視して停車している白の軽トラがいた。ドアが開いていて、運転席が空っぽなのが見える。運転手らしき作業着姿の男が軽トラの正面に出ていて、店に背を向ける格好で膝を着いていた。足元へ伸ばした両手で、何かを必死に揺さぶっている。その隣に駆け付けた店員が、男へ声をかけた。
男が店員を振り返ろうと上体を伸ばした。その拍子に、男が揺さぶっていたものの一部が覗く。肉塊のようにだらりと伸びる、うちの制服を着た男子生徒の両足だった。
村山だ。今やっと気付いた。あいつの姿がどこにも見えなくなってる。信号を無視して車道に飛び出したんだ。あの
引き返して来た店員が、のろのろ開く自動ドアを押し広げるように
「救急車! 救急車呼んで! あそこの高校の男の子が轢かれた!」
レジの店員は肩をびくつかせながらも弾かれたように店の奥へ消え、他の客は息を呑むと口々に何やら呟き出した。
騒然とし始めた辺りの空気から俺達を切り離すように、守谷は喋り続ける。
「きっとおきつね様の機嫌を損ねたから、なるべく多くの人を呼んで許して貰わないといけないんだって言ってた。私にも謝られたよ。ごめんなさいって。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。何回言ったかも分からなくなった辺りで、自分の部屋を飛び出して階段から飛び降りたんだと思う。あの人の部屋って二階だし電話繋いだままだったから、ごろごろあの人が転がり落ちて静かになるの、こっちにも聞こえてたし。すぐ家にいたお母さんが飛んで来て、悲鳴がしたと思ったら救急車って叫びながら走って行ったから、搬送はちゃんとされたと思うよ。すぐにサイレンが聞こえて来てそこで電話は切れたから、あの人のスマホが壊れたんだと思う」
「何で今日守谷ちゃん足立の事苗字で呼ぶの」
キイが硬い声で尋ねた。その目はいつもの気弱さが失せ、まるで敵を睨むように守谷を見据えている。
「
「えっ? ごめんキイちゃん、今何て?」
守谷は今初めてキイの存在に気付いたように目を丸くした。
異様な雰囲気が消えている。今まで意識を失っていたかのようにきょろきょろと辺りを見渡しては、慌てて状況を把握しようとしている様まで見せた。近付いて来た救急車とパトカーのサイレンに脇見しそうになるも、腕を引いているシーに気付くなりぎょっとする。
「……どうしたの? 顔色悪いよ」
その、
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