第4話


 息を呑んだ。


 確かにそうだ。分からない。


 何故キイはこんなにも怯え、シーは大真面目に状況把握に努めようとしているのか漸く気付く。


 写真が加工だろうが無加工だろうが、理解出来ない状況が現れる事に変わりは無いんだ。無加工だったら心霊写真が目の前に現れて、加工だったらモトが奇行を起こした事になる。心霊だのの方は全く信じちゃいないがそれは英語の先生を捕まえればいいとして、モトはそんな事をしない。俺達四人は高校に入ってからずっと友達なんだ。キイ、モト、シー、ユウって言えば仲がよくてしょっちゅう一緒につるんでるって、クラスが被った事がある奴なら一度は話す。


 説明出来ない不安に急かされて、キイに告げる。


「さっき俺とシーに見せようとしたモトとの遣り取り見せてくれ。この写真を送って来た時、あいつは何を話してた?」


 キイはブラウスの胸ポケットにしまっていたスマホを取り出すと、メッセージアプリを立ち上げて俺へ渡す。シーが身を寄せて来たので、シーにも見えるよう腕の位置を下げて内容を確認した。最新の遣り取りまでは他愛無い会話ばかりで、普段のモトの様子と変わらない。


 だが遣り取りの日付が今日の深夜になると、突然モトからの例の首無し写真が送信され、キイが俺とシーに説明した事とほぼ同じ内容が、モトの言葉で生々しく記されていた。キイからまだ聞かされていない情報はただ一つ。モトからの、この最後のメッセージだけ。


〈キイ。馬鹿なお願いだって思うだろうけどさ、こいつら軽音部に忍び込んだから、あの軽音部の幽霊ってやつに呪われたかもしれねえ。一緒に肝試しに行った俺も怖いんだ。だから、超怒られるって分かってるけど、シーとユウに頼んで、軽音部には本当に幽霊が出るのか確かめてくれないか? お願いだよ〉


「モトと連絡つかない」


 いつの間にか自分のスマホを操作していたシーが、そちらの画面を凝視して言う。


「今守谷に連絡して、モトが登校してるか訊いたんだけど、体調不良で休みだって」


「モトくんが?」


 キイは信じられないと言いたげな顔で聞き返した。俺も耳を疑う。


 あいつ元気だったぞ。


 昨日モトを合わせて俺達四人は、放課後キイの家で試験勉強をしていたが、その時のモトの様子は全く普段通りだった。


 当然それも分かっているシーは話し続ける。


「足立はどうしてるかも訊いたらあいつも休んでる。昨日守谷の家で一緒にテスト勉強してた時は、全然元気だったのにって」


 よっぽど代謝が悪いのか、滅多に汗をかいている所を見せた事が無いシーの横顔を、汗が一筋滑り落ちた。シーは画面を凝視したまま、俺達に告げる。


「軽音部の幽霊の噂も調べよう」



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