多口多加子と無口な無言くん。
山岡咲美
第1話「かき氷の夏に」
そいつはメロン味のかき氷を一口食べ、目をギュッとつむると、一息の美味しそうな吐息をついた。
「だよねーー、やっぱ、暑いときはかき氷しか勝たんよねーーーー」
アタシ、
そいつの家は古い立派な武家屋敷って感じの家で
アタシはイチゴ味のかき氷をキッチンにあった高そうな小さな銀のスプーンでシャクシャクと崩しながら食べる。
「無言、美味しい?」
「……」
アタシはそいつの顔の下に潜り込んで覗き上げながら聞きいてみる。
「お・い・し・い?」
「……………」
そいつはあんまりしゃべらない、いやしゃべったとしても、声が小さくて聞き取れない。
「お前の口はかざりかっつーの!」
「…………………………」
アタシはいつもそいつの前で独り言のようにしゃべった。
そいつの家は昔からの金持ちで、バカみたいにでかい倉の中には整然と整理されたいろんな物がたくさんあった、今かき氷を作ってる業務用手回しかき氷器もデザートグラスもそのコレクションの一つだ。
アタシとそいつは遠縁の幼なじみで、小さいころからそいつの家の倉に潜り込んでは倉の中のコレクションをおもちゃにして遊んでいた。
「メロンもありかも?」
アタシはそいつのメロン味のデザートグラスに自分の銀のスプーンを突っ込み、メロン味を一口パクリとパクる。
そいつはやな顔一つせずアタシのボウジャクブジンな行為を受け入れてくれる。
「アタシのイチゴ味も食べる?」
アタシはアタシのイチゴ味のかき氷をスプーンの上で上手に山になるように取りあげるとそいつの口元に向けた。
「ん? 要らないの?」
アタシは『要らない』と首をフルそいつを確認してなお口元にイチゴのかき氷を持って行く。
「ホラ、イチゴ味も美味しいよ」
そいつは冷たいスプーンの先がホホに当たりながら、困り顔で眉毛を八の字にする。
「アタシ無言の困った顔結構すきよ」
そいつは諦めたようにアタシの銀のスプーンかのイチゴ味のかき氷を食べてくれた。
少しスプーンが引っ張られた、指からそいつのクチビルの感覚が伝わる。
「フフーーン」
アタシはまたそのスプーンでイチゴ味のかき氷をシャクシャクと崩して食べる。
「やっぱりアタシはイチゴ味の方がすきかも」
アタシがそいつを男の子だと意識したのはいつの頃だっただろう?
そいつはアタシを女の子として意識してるのだろうか?
最近アタシはそんなことばかり考える。
「まっ、いいか、今楽しいし」
アタシとそいつはそんな関係。
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