第6話 未熟な私
美華「公園のベンチに男の人が座っていない?」
唯愛「うん...」
その私の返事で彼女が気づく。
美華「へぇ~。あれが海さんなんだ~」
私はいつもと違う時間に現れているのと、久しぶりに彼の姿を見た事よりもなぜか、彼の様子がおかしい事に気になってしまっていた。
唯愛「なにかあったのかな...」
美華「...私先に家に帰ってるから、話しかけに行ってきたら?」
その場で提案した彼女。
以前つい怒ってしまった事を謝りたい自分もいた。
でも、なぜか今の彼に近づけるオーラではない。
そして私は言う。
唯愛「今日は話しかけないでおくよ...わざわざ違う時間帯に来てるって事は、私に会いたくないわけだと思うし...」
決して彼を、恋愛対象として見ていたわけではない。
だけど、気になってしまう私。
それに自然と彼に対して、最大限の気遣いをしている自分もいた。
私の後ろにいる美華。
気づけば私は、彼女よりも前で彼の事を見ていた。
彼女は言う。
美華「唯愛がそういうならオッケー!また明日にでも会えるかもしれないしねっ!じゃあ家に帰ろっか!」
唯愛「うんっ!」
そお言って私達は、今回は彼に話しかけずに終わった。
ようやく部屋に着いた私達は荷物をおろし、窓から公園を眺めながら二人は話す。
美華「海さん、もういなくなってるね。ちょうど帰るタイミングだったんだ」
唯愛「そおだね...」
美華「でも思ってたのと雰囲気違ったよ」
唯愛「どんな感じと思ってたの?」
美華「どちらかと言えばもっと陰キャな感じかと想像してたけど、清潔感あるし優しそうな感じだったね」
唯愛「でも今日はどこか暗くて、様子が変だった...」
美華「そお見えたんだ。私にはわからなかったよ!普通な感じだった」
唯愛「そおなの?なんかめっちゃ落ち込んでるように私には見えたけど...」
美華「唯愛だけが感じる何かがあったんじゃない?」
唯愛「そおなのかなぁ。またいつかの朝にでも会えたら話しかけてみるよ。前ちょっと怒ったみたいな感じで終わっちゃったから、謝りたいのもあるしね」
美華「うんうん。唯愛がそおしたいならそうした方がいい。何かあったらすぐ私が助けに行くからさっ!」
唯愛「ありがとう美華。せっかく海さんに会えたのにね」
美華「焦っても何もイイことないよ。ゆ~っくり私達らしく前に進もっ!」
そお言って彼女は私の頭を優しく、ポンポンとしてくれた。
本当に彼女の言う通り。
焦っても何もイイことがないのは、高校生の時にたくさん実感した。
恋愛というものを知らなかった私は、香りに誘われそのまま恋に落ちた。
そして、すぐに自分の思いを伝えた。
もしあの時、束の間の感情に流されず、冷静に先の事を考えていればあんな事にはならなかったはず。
自分自身が傷を負うくらいならまだしも、美華にまでかなりの深い傷を負わせたのだ。
私に恋愛は早かった。
まだまだ未熟な私だから。
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