第31話 五味民雄の述懐 十三コマ目

 何だよ、おまえの叔母さん。たかが人生ゲームにノリノリで大はしゃぎしてたじゃねえか。もう少しツンツンしたクソ真面目な女だと思ってたんだが、正直ちょっと印象が変わったな。まあそれでも俺と住む世界が違うことは間違いないんだろうが。


 そんなこんなで、この日は事件について進展なし。そんな日もあるさ。




「ああ、叔母は人生ゲーム大好きでしたねえ。お正月とかに会うと必ずやってたような気がします。銀行家はたいてい誰かに押しつけて」


 懐かしげな十文字茜に、五味は小さく苦笑した。


「まったく、いい性格してやがるよ。高校生にもなって、そこまで楽しいもんじゃねえだろうによ」


「あ、でも」


 十文字茜は遠い目をしてこう言った。


「叔母は大学生になるまで人生ゲーム持ってなかったんです。祖父母のいる実家にはありませんでしたし。子供の頃は友達の家でたまに遊ぶ程度で、大学生になってアルバイトして、最初のお給料で人生ゲーム買ったって言ってました。もしかしたら、このときの思い出が叔母の中に強く残ってたのかも知れませんね」


 そのとき五味の見せた驚いたような悲しいような、何とも言えない表情は、茜の心に深い印象を与えた。

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