第29話 五味民雄の述懐 十二コマ目

 ああ、あの日曜日か。一日寝て過ごしても良かったんだがな、どうにもケツが落ち着かなくて、しゃあない、動くかって思ったんだ。そうだ、アイツも頭が疲れたり肩が凝ったりするだろう。リラクゼーションタイムも必要なはずだ。何か持っていってやるかな。居場所なんぞ決まってる。どうせあそこだろうってよ。


 元気が有り余ってたんだな。いまの俺からは考えつかねえわ。




「それって普通に考えて友情だと思うんですけど。違うんですか」


 十文字茜の言葉に、五味民雄は顔をしかめた。


「そんな上等なもんは知らん」


「五味さん頑固だって言われません?」


「言われねえよ。俺は素直な民雄ちゃんで通ってる」


 そのとき剛泉部長が言った。


「でも夏風さんの方はどうだったんでしょうね。この人は五味さんがどんな人間か見通した上で近づいたような気もするんですが」


「さあな。あんなバケモンの考えることなんぞわかってたまるか」


 そう言うと五味は手記のコピーを持ち上げた。顔を隠すように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る