第16話 お城観光歴史旅。国宝を楽しむんだが、実はこれも体力勝負か……?



 あまりにも広いてっぱくの館内の移動と、土合駅での階段登山によって、前日に受けた下半身への大ダメージを引きずったまま、早朝の大宮駅から発車し、まずは埼京線。武蔵浦和駅で乗り換えて、武蔵野線へ。いや、土合に行くなら体は鍛えておいた方がいいですよ、みなさん!? マジで! ガチだから、あの階段!?

 続けて西国分寺駅で乗り換えて、ここから先は中央線だ。八王子駅で乗り換えれば、ここから先の乗り換えはなし。目指すは松本駅。八王子駅からは3時間40分くらいだ。


 乗り換えがないとなれば、もう安心。しかも松本行きなので降り忘れることもない。私は意識を手放し、前掛けにしたバックパックを抱きしめるようにして眠りに落ちた。爆睡です。鉄道の揺れは心地いいんですよ……本当ですよ……。


 道中の山梨県の記憶が全然ないが、無事、松本駅に到着した。まあ、いい。そんなこともある。本当に疲れていたんだろうと思う。ここまで鉄旅で寝るのも珍しい。


 松本ではいつものように、まず宿でバックパックを預ける。小さなリュックだけを背負って、バスにのると、お城を目指す。ガンダムの白いヤツならぬ、黒いヤツ。国宝、松本城だ。白いヤツは姫路にあるな、そういえば。


 日本のお城って、かっこいいよね? そう思いませんか?


 大天守、乾小天守、渡櫓、辰巳附櫓、月見櫓の5つが繋がった連結複合式のお城。また、黒い姿が超かっこいい……。背景となる日本アルプスの山々も含めて、雄大・壮大、感動的……。


 これは好みの問題なので、いろんな意見はあるんだと思うが、私は松本城が一番好きかもしれない。


 ここで、かもしれない、というのは、国宝の5つの城のうち、あとひとつだけ、行けてないのがあるからだ。それは犬山城。何年も前に、年末に時間を作って行ってみたら、年末年始は営業してないって立入禁止のロープが張られてて……目前で崩れ落ちた経験がある……。


 ちなみに松江城については、国宝に再指定される前に行ったので、国宝になってからは行ってないんだが、それはまあ、いいだろう。


 単純に、黒が好き、なのかもしれない。


 もちろん、写真を撮りまくる。そして、中へと入っていく。コロナ禍の中でも、やっぱり人気の観光地は人が多い。修学旅行か、遠足か、中学生の集団がいたのも、人が多い原因かもしれない。引率の先生方も大変そうだ。


 で。お城の天守閣って、基本、階段なんですよね。


 昨日の土合駅もそうなんだが、階段って、強制的なスクワットみたいなモンでしょ? ぐっとふとももを上げて、足を持ち上げ、踏み込んで全身を上へと持ち上げる。おかしい、歴史的な名所の観光のはずなのにまるで部活の筋トレみたいになっとるやないかい!? なんで?


 それとね、バリアフリーみたいな概念なんかない時代に造られてるから、階段がやたらと急なんですよ。攻められた時に守りやすいってのもあると思うし。お城ってそういうもんですよね?


 さらには大切にされてるからどこまでもぴかぴかに磨かれてて、つるつるで滑りやすいとか、足の指先まで神経使いますし。素足ならまだしも、靴下だと、かなりアレなんですよ……。


 一番上に辿り着いた時には、ふとももが乳酸で爆発するんじゃないかと思った。いや、マジで、どこまで体力勝負なの!?


 でも、ここからの景色は最高。やっぱり、お城、いいね。


 子どもの頃、大阪城にのぼるのが好きだった。実質、展望台だもんな。見下ろす車がミニカーみたいで、ちょっとしたゴジラ気分が味わえたし。ぐふふ、踏みつぶしてやるぜ、みたいな。


 アルプスとお城。なんかすごいぞ松本城。


 だからといって、身体に負担がない訳ではない。というか負担が大きい。


 下りはね、自分の体重を足首とか膝とかで受け止める訳ですよ。そのダメージがでかいのなんの。


 基本、階段は渋滞してるので、ぶつからないように、滑らないように踏ん張る必要もありまして。目の前で中学生がつるっと滑って転びそうになってたし。こわっ。


 階段の交通整理でおじさんが立ってるお城は初めてでした……きっと落下してしまった時の安全確保も考えてるのでは……。


 それでも天守から出て、お堀の周りを一周して撮影しましたよ。どこが一番いいポジションかも気になるので。


 あと、有名なお城に行ったら必ず見掛ける、全国のお城のパネル。あれ、なんでどこに行ってもあるんだろうね? 誰かが配ってるのかな?


 帰りのバスの中で、ふくらはぎがぷるぷるきてました。超やばい。


 午後は長野まで足を伸ばす予定だったんだが、この疲労度では無理はダメだとここで断念。予定より早く宿にチェックインして、汗を流して、ふと気づいたら寝てた。よく寝る日だ。

 ここまでの長旅の疲労が蓄積しているというのもあったのかも。乗り放題切符だというのに、無念。長野往復分が使えなかった。

 若さが、若さがほしい。こうして人は不老不死を求めるようになるのか……全ては乗り放題切符のために……。


 陽が沈んでいたので、夕食で体力の回復を、と。松本駅のからあげセンターでチキン南蛮丼と油淋鶏定食を食べて体力の回復を図る。いや、どう考えてもそれは食い過ぎだろ……。


 お腹がいっぱいになったら、まだまだ眠れる。眠ればきっと、体力も回復するに違いない。


 そう信じて、再び宿で意識を手放しました。





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