宝石まいのネネお姉さまにもう一度キスをする

十矢

第1話 舞という名前のダイヤモンド

 あぁ! もう、ぜったいに

 ネネお姉さまの唇をもう一度、奪ってやる!



 わたしは、未咲希みさき まい

 ヒトだった者。


 小学四年生のときに、重い病気になり、五年生になるころには、入院。

 そして、二個上の中学生の兄が買ってきた本


 "小悪魔な水着の彼女たち"


 に載っていた悪魔召喚の呪文と陣をつかい

 悪魔ネネ フリュークス アミテスを召喚した。


 二週間、血の契約により、悪魔なネネお姉さまを召喚して以降、さまざまに願いを聴いてもらい、そして、あっさりと死ぬ。


 血の契約に、わたしが死んだら、エネルギー体を分霊してもらうことを約束したため、ネネお姉さまに、ダイヤモンドのなかに、わたしを封じこめてもらった。


 いまは、宝石まいとして、ネネお姉さまの胸元で、ネックレスの先端でかがやいている。



 しかし、わたしには、夢がある。



 今日は、ネネお姉さま、

 略してネネさま、

 略してネーさま、

 変換して戻って、姉さまは、仕事おわり未来視悪魔ミレイが持ってきた、タイトル


 "前世に恋してね"


 という、前世が解る本を熱心に読んでいる。

 いつも休みやその他の時間一緒に行動している、悪魔メディナナタリアの過去が知りたいみたい。



 前世。

 わたしって、いまは宝石だから、

 前世はヒトってことになるのかな。


 でも、宝石にまさか意思があるとは、悪魔な姉さまでも、想ってないだろう。

 いや、草花や木々、空気にも精霊がいるわけだから、もしかして、このわたしの状況もそんなには、珍しくないのかな。


「メディ、これ。つかってみてよ」

「なにこれは」

「えと。その、前のことがわかるやつ」

「ネネはつかわないの?」

「わたしは、いいの」


 どうやら、お姉さまは、メディの過去になにがあったか、知りたいみたいね。


「わかった」


 メディがその本に、手をおきスキャンする。


 "完了しました。前世はヒトで、陸上をしていた。演劇にも興味をもち、学校では舞台鑑賞も趣味に。くろい羽根と縁がある模様"



「え、それだけ」

「うん。もう一回するかい?」

「頼りないなぁ。もっとこう」

「ネネは、なにか知りたいことあるの?」

「あ、え、ううん。なんでもないの」

「そう」


 すると、公園のベンチに座っていたネネとメディのところに、黒鉄くろがね鳥が近くまで、やってくる。


 姉さまが、よく使いにだす鳥とは、別だ。

 でも、姉さまの近くにきて、閉じていた本の上に乗っかる。


「ふふっ。この子、なに。この本、気にいったのかな」


 すると、ふいにわたしの身体 (宝石)が、淡くひかりだす。

 わたしは、驚く。


 "なんだろう"

 "まい"

 "え"

 "これから、ときどき話しかけるからね"

 "うん"


「どうしたのネネ」

「うん。ときどきマイが光るんだよね。なんだろう」


 淡い光は、すぐになくなる。

 姉さまやメディには聴こえていなかったようだ。


 すると、まいの何もないはずの宝石の内部異空間に、一冊のノートが視えてきた。


 宝石ノートと、表紙にみえる。


 "あれ、これって悪魔ノートに似てる"

 "お姉さまが、みせてくれたもの"


 宝石まいの空間が、拡張されていき、まるで座っているだけの狭い箱のような場所のイメージだったのに、少し寝そべるくらいの広めの空間のイメージになった。


「宝石ノート。わたし、もしかして、この宝石の空間のなかで、しっかり生きてるの」

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