ファミリア~紡がれる想い~
ばーぼん
第1話 全ての始まり
僕は今、ものすごく焦っている。
慣れない場所、慣れない人混み、そして目の前に聳え立ち周りの建物とは一線を画し煌びやかで大きな校舎。
そのガルシア王立魔法学園の入口の前に僕は絶望に打ちひしがれならがら1人佇んでいた。
この魔法学園では主に10歳から18歳までの若者が、将来魔法師になる為に魔法技術や魔法学を学ぶために通う学校である。
ここガルシア王国では、学園在学中に魔法師試験を受け、合格する事により王国から認定証が送られる。魔法師になれた者は将来安定した生活を送る事が約束されるほどにこの国では魔法師というものは貴重な存在なのだ。
そしてこの学園に通う若者はそんな将来を目指して貴族や平民問わずたくさんの生徒が通っている。
この学園は入学試験で良い結果を出せば、身分問わず誰でも入学する事ができ、毎年ものすごい数の若者が試験を受けに来る。
そしてその試験に見事受かる事が出来た僕アレス・ラグナは、今日入学式当日を迎えていたのだった。
入学式に参加する為に多くの新入生が学園の門を潜る中僕は門を潜らずに焦っていた。
「なんでこんな事になっちまったんだ・・・僕は学園なんかに通わず辺境でひっそりと父さんと母さんの手伝いをしながら、何事も無く平凡に暮らしていたいのにぃー!」
頭を掻きむしりながら膝から崩れ落ち絶望の色で顔が染まる。結構大きめの独り言を門の前で言っていると、不審に思った生徒達から怪訝な目を向けられてしまった。
(うわっ、めっちゃ沢山の人から見られてる最悪だ・・・僕の事を見るな、僕とは違って将来有望な優等生ども・・・・・・魔法師になんてなる気ないのに・・・魔法師になんてなっちまったら、王国からの指名以来とか、他にも役所とか魔法研究所とか色んな所から依頼やら雑用やら色々押し付けられるに違いない、そんなに仕事ばっかりしてたらストレスで死んじまう。給料はいいかもしれないけど、休みがなかったら使ってる暇がないじゃないか・・・あぁ〜魔術師になんてなりたくないよぉ〜・・・・・・これも全て父さんのせいだ!)
そんな事を心の中で嘆いて居ると入学式の開始15分前の鐘がなり始めた。
事の発端は、今から半年程前の事だ。僕はいつも通り畑で母さんの手伝いをしていると、父さんが見慣れない人を連れて仕事から帰ってきた。父さんが連れてきたその人は服装からして貴族の人だということは直ぐにわかった。
こんな辺境の地にお偉方がいったいなんの用なのかと考え込んでいると、父さんとその人は僕の前まで来た。
2人はとても真剣な表情だったので、何となく嫌な予感はしていた。
「仕事中すまない。アレス、お前にお客様がお見えだ。クリフ・ロッジ様だ」
「やぁ久しぶりだねアレス君、以前あったのは君がまだ4歳位の時だったから覚えてないと思うから、改めて自己紹介させてもらうね。私はクリフ・ロッジ、よろしくね!」
さすが貴族と言うところか、うちの父さんとは違って身なりもしっかりとしており、礼儀作法も綺麗だった。
これが貴族というものかと、そんな事を感慨深く思って居ると、表情に出ていたのか父さんがため息混じりに「うちも準ではあるが一応貴族だぞ」と呆れた様子で言ってきた。
そういえばうちも一応貴族だった。爵位で言うと士爵になり、1番低い爵位になる。
多分父さんの態度と言葉遣い、そして様付けで呼んでいることから爵位はそれなりに高いと見える。なので僕も礼儀正しくしていないと後で父さんがあれやこれや五月蝿そうなので、服に着いた泥を払い、外に飛び出たシャツの裾をしまい身だしなみを整え、勢い良く頭を下げお辞儀をし、自己紹介をする
「初めまして、クリフ・ロッジ様。こんな私目の為に辺境までお足を運んで頂き誠にありがとうございます」
あまり長ったらしく喋らず短く自己紹介し、最後にお礼の言葉を言う。10歳にしては我ながら完璧な挨拶だと心の中で称賛していると、ははっとクリフ様(フルネームで呼び続けるのも面倒なので心の中ではこれからは名前で呼ぶことにしよう)の微笑が聞こえたので、何か変だったかなと思い恐る恐る顔を上げた。
「そんなに畏まらなくて大丈夫だよアレスくん。確か爵位はラグナ家より上だけど僕は爵位をあまり気にしていないからいつも通りにしてもらって構わないよ!」
おぉなんて寛大なお方なんだ貴族がみんなこんな感じだったらいいのになと思った。まぁクリフ様以外の貴族にあったこと無いから貴族にどんな感じ人が多いかなんて知らないけど、クリフ様の先程の発言からして貴族階級では爵位を気にするしとが多いのだろ。
(畏まらなくていいって言われたけど、さすがにタメ口とかは不味よね?父さんに目で意思疎通をして確認を・・・・・・あっダメだこの人何も考えてないや、自分よりも位の高い人が来てるって言うのにのほほんとし過ぎたろ!・・・とりあえずお礼だけはしておかないとやばいよね)
「お気遣い頂きありがとうございます!」
「ハハッまだ少し硬いけど少しづつ慣れてくれると嬉しいな!グレットとは大違いだよ、君のお父さんは初めて会った時敬語なんて一切使わなかったのに!逆に今は敬語で話されるから少し寂しさはあるけどね」
クリフ様は笑いながら父さんとの昔のことをどこか懐かしそうに話してくれた。当然そんな話をされたからなのか父さんは気恥しそうに後頭部を書きながら「昔のことはいいだろ」なんて言っている。
勘弁してくれ、今まで厳しかった父さんの恥ずかしそうにしてる姿なんて見たくないぞ。なんか寒気がしてきた、気持ち悪い。
「それよりもクリフ、そろそろ本題の話をしないか?」
父さんに対してそんなことを思っていると、真剣な表情に戻った父さんがクリフ様に話始めた。
「そうだね、時間もあまり無いし本題に移ろうか。今日僕がここに来たのはアレス君、君に頼みがあってきたんだ」
「た、頼みとはいったいなんでしょか?」
先程までニコニコしていたクリフ様が真剣な表情で話始めたので、ちょっと、ほんのちょっとだけ僕は緊張してしまった。10歳の少年に大人のしかも貴族様の真剣な眼差しは少し怖さを感じてしまうのは仕方のない事だと僕は思う。
「頼みと言うのは、君に僕の娘と一緒にガルシア王立魔法学園に来年の4月から入学して欲しい!」
はい、嫌な予感的中しました・・・そして僕の人生終了の知らせも同時に来てしまいました・・・・・・・・・。
(嫌だあぁぁぁぁぁぁ!魔法学園なんかに行きたくなぁぁぁぁい!僕は畑を耕しながらこの辺境で平凡に暮らすんだぁぁぁぁ)
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