最終話 幸福と災難


 僕達は木更津駅までやってくると、社長と僕以外は解散となった。

 そして、社長と2人でしばらく待っていると、カナちゃんが駅に着いたので車に乗せ、さっきの神社まで戻る。


「じゃあな、エロミ」


 僕とカナちゃんが車を降りると、社長が窓を開ける。


「うん、ありがとう」

「ありがとうございます」


 僕とカナちゃんがお礼を言うと、社長は手を上げて、去っていった。


「カナちゃん、こっち」


 僕はカナちゃんの手を握ると、歩き出す。


「あのー、先輩のお家ってここですか?」


 やっぱりカナちゃんは僕の実家に行くと思っていたようだ。


「いや、違うよ。ちょっと神様に会ってほしいんだ」

「はい?」


 カナちゃんは首を傾げながらもついてきてくれたので鳥居をくぐると、社の方に向かう。


「神社…………え?」


 カナちゃんが賽銭箱の上に浮いている神様を見て、驚いた。


「君が明浦カナで合っているね?」


 神様が優しい笑みを浮かべながらカナちゃんに確認する。


「は、はい、そうですけど……あのー、どうなっているんです? ワイヤー?」

「ふふ、そうだね。説明をする前に先に済ませておこう」


 神様はそう言うと、カナちゃんに手を向ける。


「えっと……あれ? あれれ? 何これ? 気持ち悪い……」


 カナちゃんが口元を抑える。


「ごめんね。いきなりで混乱しているだろう。少し、落ち着こうか。深呼吸をしてごらん」


 神様がそう言うと、カナちゃんがその場で息を大きく吸い込み、吐き出した。


「お前は大事な彼女が混乱しているというのに……」


 神様が呆れた顔で僕を見てくる。

 どうやら深呼吸をしたことで揺れたカナちゃんのおっぱいを見ていたことがバレたようだ。


「カナちゃん、大丈夫?」


 僕は聞こえなかったふりをして、カナちゃんの背中をさする。


「先輩…………私、先週のクリスマスに話したことを思い出しました」

「そう?」

「はい。先輩、ごめんなさい」

「謝ることじゃないよ。悪いのは僕だから」


 おしっこしたせい。


「カナちゃん、本当にすまない。私が君を巻き込んだせいだ」


 神様が宙に浮いたまま、頭を下げた。


「あ、はい。あのー、どちら様です?」

「私はこの地域に住まう恋愛の神だ」

「はい?」

「別に信じなくてもいい。だが、君の彼氏を彼女にしたのは私だ」

「えっと……どうして先輩が女の子になったんです?」


 カナちゃんがそう聞いたので僕は財布から千円を取り出し、賽銭箱に入れる。


「私は恋愛の神だ。だから氏子であるこの者の願いを叶えた。この者は勇気を望んだのだ」


 賄賂……じゃない、お布施をもらった神様が適当なことを言い出した。


「勇気ですか?」

「そうだ。最近の男子は奥手の者が多い。だから君のことを想うこの者の背中を押した」

「そ、そうだったんですか…………ん? それがなんで女の子?」


 僕もそう思う。


「これはこの者の成長を願ってだ。恋愛経験のないこの者ではせっかく成就した恋も失ってしまうかもしれない。だから女にし、女心を学んでもらおうと思ったのだ」


 苦しくない?

 大丈夫?


「そうだったんですか……」


 カナちゃんって素直な子だなー。


「うむ! そして、この者はちゃんと女心を学び、君に相応しい男になった!」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます……」


 一応、お礼を言っておこう。


「エロミ、男に戻りたいと願うがいい。今ならいける」


 ここで?


「あのー、服とかどうなるんです?」

「その辺はどうにかなる」


 ホントかいな……


「じゃあ、願ってみます」


 僕は目を閉じると、強く願う。


 男に戻りたい、男に戻りたい、男に戻りたい。


「目を開けよ」


 神様に言われたので目を開ける。


「あれ? いつの間にか先輩が先輩に戻ってます」


 カナちゃんが僕の身体をペタペタと触ってきた。


 僕は自分の身体を見下ろすと、男の時の私服を着た自分の身体が見えていた。

 もちろん、微妙な膨らみはない。


「うむ、戻ったな。では、行くがいい。なお、その呪いは永遠に解けることはない。だから誰かが女になりたいと願えば、巻き添えで女になる。気を付けよ」


 え!?

 さり気にとんでもないこと言ってるぞ。


「か、神様!?」

「ではな。私はいつでもお前らを見守っている。だが、たまには顔を見せにきなさい。いいね?」


 神様は賽銭箱をバンバンと叩くと、微笑みながら消えてしまった。


「えー……」


 ひどくない?


「まあ、戻れたんだからいいじゃないですか」


 まあねー。


「カナちゃん、似合う?」


 僕はくっついてきているカナちゃんに向けて腕を上げると、腕時計を見せつける。


「はい! とてもお似合いです!」


 カナちゃんが嬉しそうに笑い、抱きついてきた。


「カナちゃん、こっち」


 僕はカナちゃんの腕を掴むと、神社の裏に行く。


「え? え? なんですか? って、どこを触っているんです! ちょ、先輩、外はマズいですよ、あ、先輩っ」


 僕は半年も我慢したせいで、これ以上は我慢できなくなり、カナちゃんの身体をまさぐっていった。


「――駅前のホテルに行けー!! ここをどこだと思っているんだ!?」


 急に神様が現れてめちゃくちゃ怒られた。


 僕達はタクシーを呼び、すぐに駅に戻ると、ラブホテルに行き、めちゃくちゃセッ○スした。




 ◆◇◆




 夕方になり、ホテルを出ると、カナちゃんは電車に乗って東京に戻っていった。

 僕は実家に帰り、年末年始を久しぶりの家族と共にゆっくりと過ごした。


 そして、1月2日に東京に戻ると、カナちゃんと初詣に行き、家に帰った。

 その日は2人でゆっくりと過ごし、夜にはめちゃくちゃセッ○スした。


 翌日の1月3日は最後の休みの日である。

 この日はいつものファミレスでいつもの3人と会うことになっていた。


 僕達はファミレスに集まると、顔を合わせる。


「さて、犯人捜しの時間だね」


 僕は3人を見ながら言う。

 でも、ごめんね。

 犯人は僕。


「そうだにゃ。この中に裏切者がいるにゃ」


 裏切者は僕……


「本当にな。昨日の夜、びっくりした」


 僕はびっくりしなかった。


「なんで女に戻っているんですかねー? 確か、神様が言うには誰かが女になりたいと願えば、巻き添えで女になるんでしたよね?」


 …………僕達は昨夜から女に戻っていた。


「この中に女になりたいと願った人がいるね。ニャー子でしょ」


 僕はここに来る前から人のせいにしようと思っていた。


「違うにゃ」

「じゃあ、誰?」


 僕は責めるような目で3人を見渡す。


「うーん、事故ってことはないですかね?」

「まあ、そうかもな……」


 超常現象だし、その線でいくか……


「なるほど。そうかもしれないね」


 きっとそうだ!


「タマはエロミだと思うけどにゃー……」


 ぎくっ!


「なんでだよ! せっかく男に戻って、これからカナちゃんにやられたことをやり返していくのに!」


 なお、すでにやり返し始めているし、××××もしてもらっている。


「ふーん……カナちゃんに女になって、とか言われなかったにゃ?」


 な、何のことやら……


「そんなわけないでしょ」

「怪しいにゃ」


 だって、仕方がないじゃん。

 カナちゃんってドMなくせに急にスイッチが入って、Sになるんだもん。

 メグちゃんの女の子部分が見たいなーって言われたら逆らえないよ……


「よし! 本日の議題は攻めと受けのどっちがいいかについて!」

「やっぱりお前にゃ」

「女のエロミをいじめたくなったんだろうな……」

「エロミ姉さんっていじめたくなる見た目をしてますしね……」


 うるさいな……


「男の先輩がしたいことを全部受け入れるから代わりに女の先輩は絶対に私に逆らわないでください……ってどういう意味かな?」

「そのまんまにゃ」

「お前ら、2人共がドSとドMだよな」

「お幸せに……でも、その度に巻き込まれる俺達が面倒なんですけど……早く結婚して落ち着いてくれません?」


 それだ!

 結婚しよう!

 戻ったら〇出ししたる!

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