第011話 大人な女
「これとか先輩に似合うんじゃないです?」
カナちゃんがそう言いながら薄ピンクのニットを手に取り、俺の身体に当ててくる。
「そうかなー?」
「そうですよ。着てみてください」
「うん」
僕は試着室に入ると上着を脱ぎ、薄ピンクのニットを着てみる。
鏡を見ると、かわいらしい女の子が映っている。
ニットって胸を強調する服なのに僕が着てもまったく魅力はゼロだ。
カナちゃんが着ればいいのに……
「どうかなー?」
試着室のカーテンを開けると、カナちゃんに見せる。
「先輩、かわいい! すごく似合いますよ!」
「そう? じゃあ、買おうかな……」
自分のファッションに興味はないが、カナちゃんが喜んでくれるなら買う。
「それに合わせるスカートはどうしようかなー……メグちゃん、ミニは穿ける?」
あっ……
「穿けるけど、寒がりだから……」
「タイツを合わせるか……」
うん……
何でもいいや。
どうせ僕のファッションなんか自分の目に入らないし。
大事なのはカナちゃんの笑顔だ。
僕、かっこよくない?
◆◇◆
僕は遅れてファミレスにやってくると、3人がすでに待っていた。
「遅れてごめん」
「別にいいにゃ」
「……たいして遅れてないしな」
「……そうっすね」
ニャー子は普通だが、社長とチヒロっちが僕を頭からつま先まで見てくる。
「どうしたの?」
「んー? お前、今日はおしゃれだにゃ」
ニャー子が2人の視線に気付き、僕の服を見てくる。
「昨日、カナちゃんと新しい服を買いに行ったんだよね。カナちゃんが選んでくれたんだけど、どう? 似合う? かわいい?」
「似合うにゃ。かわいいにゃ。でも、寒くにゃいのか?」
ニャー子が足を見てきた。
「僕もそう思ったんだけど、意外とタイツって暖かいよ。さすがに生足は無理」
寒すぎ。
「ふーん、タマもそれならいけるかもにゃー……」
「いいと思うよ」
「あ、座るにゃ」
ニャー子が端に避けてくれたので隣に座る。
「お前らって、よくスカートを穿けるよな。しかも、そんなミニ」
「そうっすね」
んー?
「いや、社長のタイトスカートもチヒロっちの制服も短いじゃん。あれと一緒」
社長は仕事服で来ることがあるし、チヒロっちも制服で来たりすることもある。
「あれはそういうものと割り切れるんだが、私服はちょっとな……」
「わかります。自分も私服は無理ですね」
「社長はいい年だからわかるけど、チヒロっちは頑張るにゃ。ギャルじゃん」
確かにスカートを穿かないギャルっていうのも変だ。
「ですかねー? 2人はなんで穿けるんすか?」
「気にしたことがない。そもそも自分のファッションに微塵も興味がないからね。単純にカナちゃんが喜んでくれるから」
「タマは仕事上、私服も意識しないといけないにゃ。どこで撮られるかわかんないし、ダサいのはNGにゃ」
「そうっすか……」
チヒロっちが悩みだす。
「なあ、俺はいい年か?」
あ、社長が地味にショックを受けている。
「自分でもミニはないと思ってるでしょ。というか、社長は背が高いし、パンツスタイルが似合ってんじゃん」
「そうにゃ。かっこいい系で良いと思うにゃ」
「あんまり嬉しくないな」
「そんなもんでしょ。僕もかわいいって言われても嬉しくないし」
すごくどうでもいい。
「そうか……」
「あのー、服ってどこで買うんっすか?」
チヒロっちが聞いてくる。
「僕はショッピングモールに行ったね。でも、友達と行ったほうが良いと思うよ。ぶっちゃけ、僕らのセンスって男のセンスじゃん。女子の服ってエロいかエロくないかくらいしか評価しなくない?」
「相変わらず、エロミらしいひどい発言だが、こればかりは同意する」
「わかるにゃ」
「確かにそうっすね」
男なんてそんなもんだ。
「だから友達のJKと一緒に行って選んでもらいなよ。僕もカナちゃんに選んでもらったし。女の子には女の子にしかわからないファッションやルールがあるでしょ」
もちろん男にもある。
男がカッコいいって思うものが女がかっこいいと思うかは別問題なのだ。
「わかりました! そうします!」
チヒロっちは力強く頷いた。
「さすがは彼女持ち」
「非処女は違うにゃ。エロミ姉さんにゃ」
君らも早く大人になりな。
痛いのは最初だけだから。
まさか自分が挿れてって懇願するとは思わんかったわ。
しかも、年下の後輩女子相手に……
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