エロミちゃんの幸福と災難 ~せっかく彼女ができたのに女の子になっちゃいました……何故、僕にはアレが付いていないのか?~
出雲大吉
第001話 おっぱい最高!
平凡。
この言葉を良い意味だと思う者と悪い意味だと思う者がいるだろう。
僕は前者だった。
小学校も中学校も高校も大学もずっとそう思っていた。
だが、社会人になると気持ちが変わってきた。
平凡な僕に何かの魅力があるわけではなく、特別な趣味もない。
ただ、会社と家を往復するだけの人生。
まだ社会人になって、3年だが、もう飽きた。
これが後、数十年も続くと思うとぞっとする。
だから神様。
僕の人生を華やかにしてください。
こう願ったのが1週間前。
そして、昨日、その夢は叶った。
僕は世界中の男の中でも絶対的な勝ち組となったのだ。
しかし、それと同時に僕は大切なものを失ってしまった……
◆◇◆
「先輩、これはどうやるんですか?」
僕がデスクにつき、パソコンとにらめっこをしていると、隣の席に座っている直属の後輩が書類を持って聞いてくる。
「ああ、それはね……」
僕はまだこの会社に入社して3年だが、ある程度の仕事を任されている。
これを上からの期待と思うか、仕事を押しつけられているかと思うかは人ぞれぞれだろう。
僕は前者と思うようにしている。
じゃないと、こんな夜まで残業している状況が嫌になってしまうからだ。
「ありがとうございます! 先輩はすごいですね!」
たいしたことを教えたわけではないが、後輩がかわいい笑顔で称賛してきた。
正直、僕がこの会社で頑張れるのはこの1年前に入ってきた後輩のおかげと言っても過言ではないだろう。
この後輩は明浦カナさんと言い、僕の一個下になる。
留年したらしいから1個下だが、会社的には2年後輩だ。
彼女はかわいらしい童顔で身長も高くない。
おそらく150センチ程度だろう。
肩までそろえた黒髪も可愛らしく、まるでお人形さんの様なかわいさを誇っている。
そして何より、黒のスーツを押し上げるほどの胸は脅威である。
正直、そこに目がいかないようにするのに必死だ。
良い先輩でありたいからね。
「いいよ。それよりもこんな時間まで付き合わせてごめんね」
時刻はもう夜の9時だ。
そして、オフィスにはもう僕と明浦さんしか残っていない。
「私は大丈夫ですけど、先輩は大丈夫ですか? このところずっと残業じゃないですか……」
「ちょっと納期がね。でも、今日、明浦さんに付き合ってもらったからなんとかなりそうだよ」
「だったら良かったです」
明浦さんがニコッと微笑む。
この笑顔があれば頑張れる。
そう思えた。
「本当にありがとうね。御飯でも奢るよ」
「本当ですか? ありがとうございます! 先輩はいつまでやられるんです?」
「今日はもう大丈夫かな……来週、ちょっと頑張ればいけそうだし、もう帰るよ。明浦さんも帰っていいよ。あ、ちゃんと残業はつけてね」
アンチブラック!
僕はいくらでもサービスするけど、この子はダメ。
この子が辞めたら多分、僕も辞めるし……
癒し云々もあるけど、これ以上仕事が増えるのが単純にきついのだ。
「じゃあ、先輩、この後、奢ってくださいよ」
「この後?」
もう9時だから空いているお店が限られるんだけどな……
「ほら、明日は休みでしょ。飲みに行きましょうよ」
まあ、今日は金曜だし、明日の土曜は休みだ。
いいかもしれない。
飲み屋の場合は高くついてしまうが、趣味もない僕はお金を使うことがほぼない。
だから手伝ってくれた後輩のために多少のお金は出しても問題ないし、こんなかわいい子と飲みに行けるのはとてもありがたい。
「じゃあ、行こうか。近くの飲み屋でいい?」
「はい! お願いします!」
僕達は片付けをすると、一緒に会社を出て、近く居酒屋に向かった。
居酒屋に着くと、席につき、メニューを開く。
「明浦さん、何飲む?」
「あ、ビールでいいですよ」
「ビール飲むの? 会社の飲み会じゃないし、無理して頼まなくていいよ。僕もサワーにするし」
会社の飲み会での最初はビールというのは何だろうね?
頼みやすいし、速いというのはわかるが、嫌いな人も普通にいるだろうに。
「そうですか? じゃあ、カルーアミルクで」
女子っぽい!
カルーアミルクが何なのか知らないけど!
僕達はお酒と共に適当につまみを頼むと、乾杯をし、飲み食いし始める。
「美味しいね」
「ですね。明日休みだと思うと、いっぱい飲んじゃいます」
「だねー」
とはいえ、この時間まで何も食べていなかったのでお酒が回るのが早い気がする。
「先輩は本当に仕事ができますよね」
「そんなことないし、明浦さんもすぐに慣れるよ」
「いやー、部長も褒めてましたよ。あいつはできる奴だ。だから期待しているって」
嬉しい言葉だが、その気持ちを給料に反映してくれ。
割に合ってないぞ。
「そうかなー?」
「そうですよ。先輩って、家だと何をしてるんです?」
嫌な質問だな……
「特に何もしてないね。動画サイトを見ているか、ソシャゲ」
なお、無課金。
「へー、私とほぼ一緒ですね。彼女さんとかいないんです?」
またもや嫌な質問……
「いないよ。いたこともない」
無念……
「えー、本当ですか? 先輩って絶対にモテそうなのに」
世界三大信じていけはいけない言葉。
休憩するだけだから、行けたら行く、彼女いそうなのになー。
「そんなことないよ。明浦さんは?」
「私ですか? 彼氏はいませんね。いたらいくら会社の先輩でも2人で飲みに行きませんよ」
なるほど……
「明浦さんこそ、彼氏いそうなんだけどね」
かわいいし、ちっちゃいし、大きいし。
「そんなことないですよ。私だっていたことないです。それに先輩こそ絶対にモテますって」
「全然、モテないね」
「えー……」
明浦さんは酔っているのか頬を染めながら疑ってくる。
この時、僕は酔っていた。
だから普段は絶対に言わないことを言った。
「じゃあ、明浦さん、付き合ってよ」
実を言うと、これが初めての告白だったりする。
とはいえ、ほぼ冗談めいた言葉だ。
だから拒否されても傷付かない。
何故なら冗談で片付けてしまえるから。
「…………いいですよ」
「うん?」
はえ?
「だからいいですよ。付き合っても」
…………え?
え? え?
「そ、そう?」
「え? 冗談でした?」
明浦さんがショックを受けた顔をする。
「いや、本気だよ。ただ、流されるかなって思ったから」
「そうですか。私も本気で答えてます」
マジか……
神様、ありがとう。
僕の望みを叶えてくれたんだね!
今度、賽銭箱に1万円入れるよ!
僕達はその後も飲み続けたが、先程より、無言が続き、気まずい。
というか、なんか恥ずかしいのだ。
さっきまでただの同僚だったのに急に彼女になってしまったから。
しかも、こんなかわいい子。
「そ、そろそろ。出ようか」
「そ、そうですね」
僕達は店を出ることにし、会計を済ませた。
そして、店を出ると、明浦さんが頭を下げてくる。
「ごちそうさまでした」
「ううん。こっちこそ手伝ってくれてありがとうね」
「はい。でも、なんか仰々しいですね」
まあ、仕事を手伝ってもらったお礼だし。
「明浦さん、飲みなおす?」
「飲みなおしですか?」
「今のは手伝ってくれた会社の後輩へのお礼だし、せっかくだから彼女と飲みたいなって」
「はい」
明浦さんが嬉しそうにほほ笑んだ。
「どこ行こっか?」
「そうですねー。嬉しいですけど、あまりお店がありませんね」
この辺は居酒屋がここくらいしかない。
駅まで行けばいいが、すでに結構な時間なんだよな。
「家来る?」
「え?」
あ、マズい。
僕、完全に調子に乗ってる!
「いや、僕の家、ここから近いからさ。コンビニとかで買って飲むのはどう? タクシーで送っていくし」
「…………そうですね。じゃあ、お邪魔します」
明浦さんは頬を染め、ちょっと俯いたが、頷いた。
僕達は近くのコンビニでお酒やつまみを買うと、並んで歩いていく。
すると、明浦さんが無言で僕の手を握った。
僕はチラッと明浦さんを見ると、俯いている明浦さんが頬を染めている。
僕達はその後も無言で歩いていき、僕の家に向かった。
「ここが先輩の家ですか?」
明浦さんが建物を見上げる。
僕の家は1LDKの3階建てマンションだ。
家賃を払おうとすると、とてもではないが生活できなくなる。
「うん。ここは親戚のマンションなんだ。だから格安で借してもらっている」
「へー」
僕達は手を繋いだまま、マンションに入ると、僕の部屋がある3階まで階段を昇っていく。
そして、鍵を取り出すと、鍵を開け、扉を開いた。
「散らかっているかもだけど、ごめんね」
「大丈夫ですよ」
僕は部屋に先に入ると、電気を付け、リビングまで行く。
「すごいですね。対面式キッチンまであります」
明浦さんが感心しながら部屋を見渡す。
「テレビ見ながら料理できるのはいいよ」
「へー、いいなー」
「あ、座ってよ」
僕はリビングのソファーに座るように勧める。
「失礼します」
明浦さんがちょこんとソファーに座ったので買い物袋をソファーの前のローテーブルに置く。
そして、自分がどこに座ればいいのか悩んでしまった。
ソファーは2人用の広さではなく、1人用というか、1.5人用なのだ。
つまり、1人で座る分には広いが、2人で座るには狭い。
「先輩?」
僕が悩んでいると、明浦さんが首を傾げながら見上げてくる。
「あ、ごめん。どうぞ」
僕は誤魔化すために袋から明浦さんのお酒と自分のお酒を取り出すと、明浦さんの分のお酒を渡し、隣に座った。
狭いソファーで隣に座ったため、明浦さんの足や肩が僕の身体に当たる。
「あ、ありがとうございます」
「う、うん、飲もうか」
「は、はい」
僕達はほぼ身体を隣り合わせた状態でお酒を開けると乾杯をし、お酒を飲み始めた。
その間、あまり話は弾まなかったと思うが、お酒の力もあり、徐々に緊張も解けてくる。
「先輩に告白されるとは思いませんでしたよ」
「そう?」
「あくまでも後輩としか見られていないと思っていました」
あまり間違ってはいない。
好意は持っていたが、僕には高嶺の花すぎた。
「それを言うならOKを貰えるとは思わなかったよ」
「あはは、そうですか?」
「うん」
「あ、すみません、ちょっと暑いので脱ぎますね」
明浦さんはお酒をローテーブルに置くと、上着を脱ごうとする。
「もう6月だしね。エアコンつけようか?」
「そこまでじゃないですよ…………よいしょ」
明浦さんは断ると、狭いソファーの上で上着を脱いだ。
その間、明浦さんは胸を突き出すような体勢になったため、白のシャツを押し出すような大きな胸が僕の目に飛び込んできた。
それどころか、上着を脱いだ後もその大きな胸が主張している。
「先輩?」
僕は明浦さんの問いを無視し、お酒をローテーブルに置くと、明浦さんの手を取った。
「あっ……」
明浦さんが手を握られたことで小さな声を出し、頬を染める。
しかし、明浦さんはそれ以上しゃべることができなくなってしまった。
もちろん、それは僕もである。
僕は明浦さんにキスをしたまま。その場で押し倒した。
◆◇◆
「それでね…………」
「いや、ちょっと待て」
僕が話をしていると、茶髪ポニテのお姉さんが止めてくる。
「何? まだ肝心なところを話していないんだけど」
「いや、俺らは何を聞かされているんだ?」
「確かにそうっすね。官能小説?」
金髪ショートのギャルっぽい女の子も同意する。
「違うよ。僕がこうなった原因だってば。事実だよ」
「こいつ、めっちゃ勝ち組だったんだにゃ」
今度は黒髪ツインテールをした女の子が変な語尾を付けてしゃべった。
「そうだよ……勝ち組だよ……勝ち組だったんだよ! いや、今はそんなことどうでもいいから黙って聞いてよ」
「あ、ああ」
「わ、わかった」
「こいつ、自慢したいだけじゃないかにゃ?」
僕はその後の話を続けることにした。
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