第19話 販売ゴーレム3
3人のパーティーと別れた俺は、心を落ち着かせるために一息ついていた。
びっくりしたな……まさか俺がダンジョン神になっているとは……。
それにしても、順序がおかしいだろっ!
俺のイメージでは、まず人気ダンジョン配信者になってから、ダンジョン神だと思う。
なぜ飛び越えているんだよ!
俺は自分のチャンネル登録者数を確認してみる。
「うん、増えている」
55人だ。着実に増えているけど、その道程は遠い。
こうなったら、家に帰らずに動画編集だ。
ぱっと見て、良いシーンをピックアップ。後はアプリの自動編集が俺の意思を汲み取ってくれる。
良い感じの動画が出来上がったので、すぐに動画投稿サイトにアップした。
「どうか……チャンネル登録が100人になりますように!」
ダンジョン神になってしまった俺は、願掛けするのであった。
神の願いなのできっと叶うはず。
なんてことを思っていると、SNSに通知が来た。
あっ、アリスとリオンからだった。
ふむふむ……。
来週の日曜日に新宿ダンジョン探索のお誘いだ。
以前、一緒にボスモンスター狩りの約束をしていた。そのことを覚えてくれたようだった。
それと先日のお礼も丁寧に書かれていた。
どうもこちらこそありがとうございます! なんて返信していると、
「ブッ!!」
最後の一文に、リオンから『ダンジョン神w』とあった。
バレている!
一緒に蘇生のペンダントをクラフトするために、ミノタウロス狩りをしたから、わかって当然である。
アリスからも「神さま、当日はよろしくね」と書かれていた。
神ではないです。くもくもですと念のため返したけど、新宿ダンジョンで会う時には、ダンジョン神ネタで盛り上がりそうである。
一週間後に、彼女たちと一緒に探索か……。
その前にチャンネル登録は100人を超えておきたい。
彼女たちのチャンネル登録は今や1万人を超えているのだ。
神としても引け目を感じる。
それと登録者の中には熱狂的なファンが多くいるので、冴えない高校生の男がコラボするには危険な香りがした。
そのため、新宿ダンジョンは動画投稿せずに、純粋に探索を楽しむのを提案した。
リオンからは、ダンジョン神なのに謙虚だねと言われた。
しかし、神の力を持ってしても、彼女たちの熱狂的なファンを敵に回して、無事でいられると思えなかった。
新宿ダンジョンの様子も気になるし、来週が楽しみだ。
よしっ、一旦博多ダンジョンから帰還して、入り直そう。
理由は、新しいレシピを得るためだ。ダンジョンに入ったときにいつも支給されるから、とりあえず試してみる価値はある。
「帰還!」
納屋に戻った俺は、すぐに博多ダンジョンへポータルを繋ぐ。
ポータルは金色の光となった。ちゃんと繋がった証拠だ。
再び、博多ダンジョンへレッツゴー!
「とう!」
気を取り直して、博多ダンジョンの入口からスタートだ。
「おっ、きたきた」
アプリに新しいレシピが届いた。
待ってました!
ダンジョンに入り直すと貰えたぞ! やった!
レシピの内容は、今俺が一番求めているものだった。
◆魔ポーション(小)の素材
・デビルフィッシュの鱗 ✕ 10
・サハギンのひれ ✕ 5
・ハイサハギンのひれ ✕ 1
魔力を回復できるアイテムだ!
これで氷魔法を使い放題。
熟練度を上げ放題。
そして新たな魔法をゲットだ。
魔ポーション(小)が手に入ったら、夢が広がるっ!
魔力を回復させるアイテムは俺が知る限り、出回っていない。
このアイテムは初級ポーションと蘇生のペンダントと引けを取らない品だ。
すでに素材は、氷魔法のリングをクラフトするときに集まっていた。
やったぜ!
早速、魔ポーション(小)をクラフトだ。
アプリでクラフト開始!
出来上がったのは、小瓶に入ったスカイブルーの液体。
蛍光色が強くて、なんだか怪しい飲み物に見えてしまう。
「よしっ……飲んでみるか」
只今の魔力は30から26に減っていた。
ゴクゴク……プッハー。
ペパーミントの味がした。ほんのり甘くて飲みやすい。
「いいじゃん。美味しいぞ」
さてさて、魔力は回復しているかな?
おおっ、30に戻っているぞ!
これで魔法が使い放題。
近くにいたデビルフィッシュの群れにアイシクルを放つ。
氷魔法の連発。氷柱を14発。
デビルフィッシュはすべてドロップ品に変わっていた。
俺は魔ポーション(小)を飲み干しながら、ドロップ品を拾う。
良い感じ。
次は第二回層に行って、サハギンも狩ってみよう。
意気揚々と下の層へ行くと、
「逃げろっ」
「助けてくれ~」
モンスタートレインだ。
探索者がモンスターの群れを引き連れて逃げる行為。その道中に更にモンスターを引き寄せる悪循環。
探索者の中ではマナー違反行為となっている。
しかし、命あってのなんとやらだ。
探索者たちを追って、数えきれないほどのデビルフィッシュとサハギンが押し寄せてきていた。
ちょうど一本道を走ってきてくれているので、これはアイシクルの出番だ。
大声で逃げる探索者たちに声をかける。
「倒してもいいですか?」
「ふぇっ!? 倒してくれるのか!」
「なんとかしてくれっ」
「わかりました。なら、俺の方へ全力で走ってきてください」
「「はい」」
俺の横を駆け抜けていく探索者たち。
眼の前には、怒り狂ったモンスターの群れ。
通路いっぱいに、アイシクルを連続で放つ。
「ギャアアアアアッ」
大量のドロップ品をゲット。
助けた探索者たちにお礼を言われ、ドロップ品を拾う手伝いまでしてもらった。
「マジで助かった。ありがとう」
「困った時はお互い様です。それにしてもモンスターが多いですね」
博多ダンジョンで思っていたことだが、モンスターの数が他のダンジョンに比べて多い。
湧きが良いダンジョンなのだろうか。
「ああ……それは探索者たちがこぞって、新宿ダンジョンと大阪ダンジョンへ遠征に行っているからさ」
「なるほど」
「俺たちに今の第二階層は荷が重いって痛感したよ。上の層で行くことにする。それにしても君はデタラメに強いな」
「そうですか?」
「あの群れを一掃できて、しかも魔法使いとは……見た所ギルドにも所属していないんだろ?
この強さなら大手ギルドからスカウトが来ているんじゃないのか?」
「ええ、まあ」
「やっぱり、有名になる前に握手をさせてもらってもいいかな」
「……はい」
なんか……すごい褒められてしまった。
探索者たちは、再三に渡って俺にお礼を言いながら、上の層に向かって歩いていった。
有名になる前か……うん、本当にそうなれるように頑張らないと。
魔ポーション(小)を飲んで気合を入れる。
俺は二階層で増えすぎたモンスターを狩りまくった。そして、三階層でもハイサハギンを狙って狩り続けた。
やったぞ! とうとう氷魔法のリングの熟練度が1000に到達した。
習得した氷魔法はニブルヘイム。
自分中心に氷の領域を展開して、立ち入った者を瞬時に凍結させる強力な魔法だった。
「強すぎだろ……というか。パーティーでモンスターを狩るときには使えないかも」
俺の不安はすぐに一掃された。
凍らせる対象は俺の方でコントロールできたからだ。
これなら仲間以外の敵のみをターゲットにできる。
問題は魔力を20消費することくらいか。
まあ、魔ポーション(小)を飲めば、その問題も解決する。
ニブルヘイムの使用感を確かめていると、俺はまた熟練度を目にしてしまった。
マジかよ。ニブルヘイムの熟練度を10000にすると更に上の魔法が習得できるのか!?
それにしても、今度の熟練度はそう簡単に達成できそうな数字ではない。
アイテムクラフトをしながら、気長にやっていくのが良いだろう。
魔ポーション(小)は今後どんどん必要になりそうなアイテムだ。
数を確保するためにも、販売ゴーレムの出番だ。
◆魔ポーション(小) 1個
【購入に必要な素材】
・デビルフィッシュの鱗 ✕ 100
・サハギンのひれ ✕ 50
・ハイサハギンのひれ ✕ 10
この販売設定なら1個売れば、10個作れる。
初級ポーションや蘇生のペンダントの売れ行き好調を加味して、このくらいでも飛ぶように売れると思う。
博多ダンジョンにも販売ゴーレムを設置して、新たなムーブメントを起こすぜ!
しかし、クラフトして販売ゴーレムで売る作業が結構大変だ。
クラフトの楽しさよりも、同じ作業を繰り返すのが苦痛になりつつあった。
やれやれと思っていると、アプリの通知が来た。
『アプリに自動クラフトの機能が追加されました』
『アプリに自動販売ゴーレムの機能が追加されました』
自動……なんて良い響きの言葉だろう。
すぐに、初級ポーションと蘇生のペンダント、魔ポーション(小)の自動クラフトをセット。
すると、アイテムボックスにあった素材が次々とクラフトされていく。
よしよし、キタコレ!
そして、クラフトされたアイテムを販売ゴーレムに結びつけた。
「できてしまったか……無限機関が!」
需要が鰻登りで、最近スマホアプリでポチポチと押しながら、クラフトが追いつかなかった。
その悩みが解決してスッキリ。
これで新しいレシピのクラフトに集中できる!
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