第14話 販売ゴーレム2
心配してくれたパーティーには感謝しつつ、俺は人がいない場所まで移動した。
動画撮影の締めを早くしないと!
「これが今日の収穫です。ミスリル50個」
アイテムボックスから取り出して、地面に置いてみる。
圧巻の数だった。
「ミノタウロスをたくさん倒して得たこのミスリルを使って、ミスリルソードをクラフトします!」
アプリを操作して、クラフトを選ぶ。
50個のミスリルが宙に浮いて円を描きながら、中心に集まっていった。
そして光り輝く。
「ミスリルソードのクラフト成功です」
早速スタンダードソードと比べてみる。
「ミスリルソード方が長いです。ですが剣身は細いですね」
鞘から取り出すと、見た目に似合わず、ずっしり重い。今の俺のステータスなら、難なく振り回せる。
「2倍くらいの重さです。扱うには腕力がそれなりに必要になると思います」
軽く素振りをしてみる。重さがあるせいか、空を切る音は凄みがあった。
「ミスリルソードの性能は次回のダンジョンで試していこうと思います。これで今日の動画は終わりです。よかったらグットボタン、お気に入り登録をお願いします!」
満面の笑顔を意識して、録画を止めた。
昨日の蘇生のペンダント作成動画がお蔵入りしたので、今日は力をかなり入れていた。
ほとんどがミノタウロス戦となってしまったが、50回も戦いは流石に長過ぎるかもしれない。
まあ、攻撃パターンの研究に使って貰えるといいな。
もうじき夕食時間が迫っていた。
急いでアプリの『帰還』ボタンを押した。
ふぅー帰ってきた。納屋で装備を解除する。
早くミスリルソードの性能を確かめたくて仕方なかった。
しかし夕食に遅れるわけにはいかない。
家に入り、リビングに向かうと父さんが疲れた顔で座っていた。
そうなれば、初級ポーションの出番だ。
1個取り出して、コップに注いで声をかける。
「はい、これ飲むと元気がでるよ」
「おおおぉ、気がきくな。この所、仕事が忙しくてな」
父さんは一気に飲み干した。次の瞬間、唸り声をあげた。
どうしたんだ。何か問題があったのか?
「八雲の作ってくれるジュースは本当に疲れに効くな。栄養ドリンクなんて、ただの水に思える」
「それは言い過ぎ」
「ははははっ、ほら小遣いだ」
「いいの?」
「母さんには内緒だぞ」
やったぜ、1000円ゲット!
夕食時間となり、父さんと母さんが俺を見て、筋肉が付いてきたんじゃないかと言うのだ。
俺自身はそんな感覚はなかった。
でも二人がそう言うのなら、本当なのだろう。
「最近、ランニングをしているそうじゃないか」
「まあね」
本当はダンジョン探索だった。
両親を騙しているのが段々と心苦しくなって、食事を済ませるとすぐに自分の部屋に戻った。
「黙ってダンジョン探索はやっぱり申し訳ないな……でも」
探索は面白いし、それ以上にクラフトがやめられない。
今日のミノタウロス戦は大変だったけど、こうやって思い返してみれば楽しい思い出だ。
「動画編集しないと」
そう言っても、アプリの自動編集をするだけだ。
ぱぱっと終わらせて、動画を投稿!
「チャンネル登録者数は増えたかな」
おおっ、10から23に増えているぞ。良い感じだ。
もし100人になったら、LIVE配信をしよう。
今の俺には夢のような話だった。
いざその時が来たら、とても緊張しそうだから、心の準備だけはしておこう。
さてと、習慣となっている新宿ダンジョンの販売ゴーレムに初級ポーションを補充だ。
以前設定した1人1個までは、数が少ないと思った。素材も充実してきたので1人10本までとした。
毎日飛ぶように売れるから、たくさんクラフトして、販売ゴーレムにセットする。
たぶん明日には売り切れているだろう。
そして、俺は大阪ダンジョンにも販売ゴーレムを置くことにした。
売り出すものは、蘇生のペンダントだ。
今は1個しかないけど、上手く売れたら量産できる。
◆蘇生のペンダント 1個
【購入に必要な素材】
・ミスリル ✕ 10
・魔石(中等) ✕ 10
ミノタウロスを10回倒さないといけないけど、売れるだろうか。
ちゃんとしたパーティーで挑むなら、なんとかこなせる回数だと思う。
今の俺の目玉商品だ。売れてくれることを祈る。
アリスやリオンの喜びようからも、すごいアイテムであることは折り紙付きだ。
大阪ダンジョンの販売ゴーレムの設置場所は、一番目立つボス部屋の横だ。
こうすれば、ボスモンスターを倒して蘇生のペンダントをゲットしようと思ってくれるかもしれない。
「設置完了!」
わくわくしてきた。
しばらく売上状況を見つめていたが、蘇生のペンダントはすぐには売れなかった。
初級ポーションみたいに、簡単には引き換えの素材は集まらないから当然だろうな。
なんて思っていると、初級ポーションが在庫がなくなっていた。
「おいおい、早すぎだろ」
みんな初級ポーションが大好きなようだ。父さんも大好きだし。俺も勉強の疲れを癒やすのに使っていたりする。
こうなったら、頑張ってクラフトしまくって売りまくるぞ。
オラオラオラオラオラオラオラオラ!
くそっ、クラフトしてもすぐに売れ切れてしまう。
需要と供給が釣り合っていない。
俺は腱鞘炎の一歩手前まで、頑張った。それでも旺盛な需要を満たすことは出来なかった。
「今日はここまで!」
最後に蘇生のペンダントの売れ行きを見てみる。
まだ売れていなかった。明日の朝、また確認してみよう。
俺は腱鞘炎になりかけた手を癒やすために、初級ポーションを1個飲み干した。
「完全回復! 学生の仕事をしますか」
机に座って、勉強を始める。勉強もダンジョン配信と同じだな。
コツコツと積み重ねないと、良い結果が出しにくい。俺の場合だけど……。
地頭が良い人が羨ましい限りだ。
「明日のために頑張るぞ」
俺は勉強をしながら笑みがこぼれてしまった。
明日はなんと日曜日。だから、朝からダンジョン探索ができるのだ。
そうだ!
アイテムボックスから新調したミスリルソードを取り出して、壁に立て掛けた。
「この剣、カッコ良すぎる」
あああっ、早くダンジョン探索に行きたい!
勉強をして寝て起きたら、それができると思うと集中力が高まっていくのを感じた。
ステータスの上昇効果もあるのかもしれない。
乾いた砂が水を吸うように覚えが早いぞ! 成績上位を目指せるかも……なんちゃって!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます